トラウマによる精神障害について
ここまで読んでくれた人は相当なカクマ難民キャンプフェチか何かでしょうね。
本当にどうもありがとうございます。
最後に紹介したいのがJRSのデイケアセンターです。
JRSとは
Jesuit Refugee Service(イエズス会難民サービス)の略です。
Jesuitというのはキリスト教カトリックのイエズス会という団体のことです。
イエズス会といえば、日本に初めて来たフランシスコ・ザビエルの、
あのイエズス会です。
よっぽど世界の奥地が好きなんでしょうね。。。
JRSは世界40カ国以上で、難民の人権を守るため、サービスを提供するNGO団体です。
主にヘルスケアやカウンセリングなどの社会福祉事業を行っています。
ここカクマでも、女性の人権保護、カウンセリング、デイケアセンターの運営などを行っています。
そのなかから、デイケアセンターについて紹介したいと思います。
現在、カクマの難民キャンプにはJRSのデイケアセンターが3つあります。
このデイケアセンターで主に支援する対象となっているのは、
ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)に苦しむ女性と、
精神にトラウマを持ったままキャンプで生活する人たちです。
現在、その数が急激に増加しています。
また、家庭内で虐待を受ける子供たちもその対象となっています。
精神に障害をきたしているひとを含め、
その状況はさまざまです。
そういった様々なケースに苦しむ人々を保護する目的で立てられたのがこのデイケアセンターです。
JRSでは、デイケアセンターに39人のスタッフをカウンセラーとして派遣しています。
カウンセラーの育成もJRSで担当して行っているということです。
毎日の利用者は47人くらいいるそうですが、その日によって異なるそうです。
(これは去年の数字なので、現在はもっと増加しています)
デイケアセンターでは様々なプログラムが行われています。
スポーツ・プログラム、アート・セラピー、学習(主に英語や算数など)、工作、織物など、
それらのプログラムから好きなものを選択して参加できます。
マッサージルームがあり、ここでマッサージの職業訓練も行われているそうです。
また、センターではアヒルを飼育しています。
合計で38羽のアヒルがセンターで飼育されていますが、
これは利用者が動物のケアをすることで責任感などを養うためのものです。
デイケアセンターにはささやかながら菜園もあります。
スクマ、トマト、オクラ(オクラはスワヒリ語圏でも「オクラ」と言います)
などを栽培しています。
ここでは昼ご飯も食べられます。
センターにはキッチンがあり、利用者が食事を作ります。
健康な精神は健康な食生活あってこそ、というのがJRSの方針だそうです。
WFP(国連世界食糧計画)の協力を得て、食糧を提供してもらっています。
自分たちで栽培した野菜もこのときに食べたりします。
デイケアセンターの活動にはその他のNGO団体の協力を得ています。
例えば、LWF(Lutheran World Federation:キャンプ内で最大規模のNGO)の
ソーシャルサービススタッフが家庭訪問などを行い、
生活環境などの改善に努めます。
また、IRCは特殊なニーズに対応したケア(主にメンタルヘルス)を提供するため、
デイケアセンターにスタッフを派遣します。
看護婦も週一回定期的に訪問し、医療的なケアを提供しています。
しょっちゅう訪問させていただき、子供たちや、
精神に障害を抱えた方々と交流を持つことができました。
行きつけ(?)だったエチオピアホテルから目と鼻の先だったというのもありますが。
日本から持ってきた子供用の小さなバスケットボール(当たっても痛くないやつ)を
最後にプレゼントしてきました。
このキャンプに生活する人の多くは戦争という体験を共有しています。
それはきっと僕らが想像するよりももっと凄惨で残酷な体験であったはずです。
それにも関わらず、このキャンプで暮らしている人々の表情からは、
戦争を経験してここにたどり着いていることをまるで感じられません。
いたって何事もなかったかのように、キャンプは平静を保っているように見えます。
けれど、このセンターに集まって来る人たちの心の中に、
戦争という悲劇が落とした影は大きく計り知れません。
その体験を通して生まれた精神の歪みが、彼らを苦しめています。
平静を保っているように見えるキャンプのなかで、
最も戦争があったことを色濃く感じられる場所は、
ひょっとしたら豊かな緑に囲まれたこの場所なのかもしれません。
JRSのデイケアセンターの風景です。