リハビリテーションと障害者スポーツ
キャンプ内を歩いていると、足に不自由を持った人がたくさんいることに気がつきます。
その多くは杖で歩いているひとですが、
重度なひとはペダルを手でこぐようにできている三輪車型車椅子で移動しています。
これが結構しんどそうです。
ただでさえ道の悪い難民キャンプです。
少しでも坂道になるとその苦労は半端じゃありません。
そんなときは車椅子の後ろを押してあげてましょう。
こういった用具はすべてIRCが提供しています。
障害を持った人が多いのは当然、自国で行われた戦争の影響です。
そのため、多いのは戦争による手足の損傷や切断などです。
もちろん、戦争以外が原因で障害を持った人も、キャンプ内で負傷した人もいますが。
障害を持った人がそれだけ増えれば、当然障害を持った人へのサポートも充実します。
正確な数字はありませんが、8万人のキャンプの中に、5000人の身体障害者がいるそうです。
病院にはPTがいてリハビリができ、杖などの装具も提供されます。
そして、地域ごとにリハビリテーションセンターが設置されています。
CBR(Community Based Rehabilitation)とよばれるこの施設が障害者サポートの中心となります。
施設内では織物、染物、皮なめし、家具の製造などといった職業訓練や、
その障害にあわせて学習するための教室などが開かれています。
このリハビリテーションセンターを運営しているのもIRCです。
リハビリテーションセンターのスタッフは10人のスーパーバイザーを含め、
40人すべてが難民スタッフです。
スポーツプログラムもあります。
これもIRCがリハビリテーションの一環としてプログラムを用意したものです。
種目は、車椅子バスケット、バレーボール、サッカーなど。
その他にも、オセロや人生ゲームのようなものも含め、多岐にわたっていました。
最も盛んなのが車椅子バスケットボールです。
管理人が毎日のように通っていたゾーン5のバスケットコートも、
毎週火曜日は車椅子バスケの日であり、僕らは使用できません。
IRCのコーチが指導し、練習をプログラムしています。
それ以外にも木曜日・金曜日にも練習をすることもあり、
その終わるのを今か今かと待ちつづけます。
でも、一緒に待っていたバスケ仲間たちも、
「今日はfunny(おかしな)なゲームの日だよ」と、
冗談っぽく笑っいつつ、暖かく見守っていました。
車椅子はオランダ製の車椅子バスケ専用の車椅子を使用しています。
オランダのIRCが提供しているそうです。
みんなおそろいです。
ただ、まだ数が不足しているというのが現状です。
ケニア国内のチームとの交流試合なども組まれたり、
積極的な活動がされています。
ただ、キャンプ内の5000人の身体障害者のうち、
スポーツプログラムに参加しているのは300人。
97年からスタートしたプログラムで、年々参加者も増えているのですが、
対象者に対して参加者の数はまだ十分といえません。
彼らには「生きがい」が必要なんだ。と、車椅子バスケのコーチは言います。
キャンプを出る見通しも立たないまま、
将来に希望を見出せないまま、
ただただ時間だけが過ぎてゆきます。
彼らの中には自暴自棄になるものや、酒におぼれるものも多いといいます。
彼らに「生きがい」を提供するために、このプログラムが必要なんだ、と。
彼らの持っている障害は、彼らの将来に大きな不安を与えています。
例えば、彼らが欧米などに留学するなどして移住できる可能性は非常に低いのが現状です。
また、自国の混乱も終息を迎える気配を見せません。
職業訓練などを受けたところで、それを職業として生かす機会もなく、
このキャンプを一生出ることができないという可能性も高いのです。
このキャンプには、他のアフリカの都市に比べても充実した支援体制が整っています。
しかし、ここはあくまで街ではなく、難民キャンプなのです。
もし、帰還することになれば、その後は一切の支援を受けることができなくなり、
継続的なケアを受けることができなくなります。
キャンプを出るかどうかは、彼ら自身の選択に委ねられていますが、
キャンプでこのまま生活していくことを望む者も多いのが現状です。
車椅子バスケをするための車椅子です。
写真は一応許可をとってからにしてくれ、といわれていたので隠し撮りです。
中央にいるのがコーチです。
リハビリテーションセンターの風景です。