この記事の目次
熊本県合志市の有料老人ホームむべの里合志で利用者が職員を包丁で刺す。
職員殺害未遂の疑いで86歳入居者を逮捕。
利用者が包丁で職員を刺す。
非常にショッキングな事件ですが、熊本県合志市の有料老人ホームで、86歳の利用者による殺人未遂事件が起きています。
熊本県合志市の老人ホームで、職員の女性を包丁で刺し、けがをさせたとして86歳の入居者の男が逮捕されました。
TBSニュース
殺人未遂の疑いで現行犯逮捕されたのは、澤村健一容疑者(86)です。
警察によりますと、澤村容疑者は、29日の午前、入居している有料老人ホームで職員の女性の背中を包丁で刺し、殺害しようとした疑いです。刺された女性は病院に運ばれましたが、命に別状はないということです。
警察の調べに対し、澤村容疑者は「刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった」と容疑を否認しています。澤村容疑者は先月、警察に施設との金銭トラブルなどを相談していたということです。
別の記事では、包丁は澤村容疑者のもので、刃渡り15cmほどのもののようです。
なぜこのような事件が起きたのでしょうか。
利用者による殺人未遂事件はなぜ起きたのか?
気になる部分として、記事の中でも澤村容疑者は施設との間の金銭トラブルについて警察と相談をしていたということです。
澤村容疑者がどのような障害を持っていたか、認知面での問題がなかったかどうかはわかりませんが、事前に金銭トラブルについて警察に相談をするということができるということは、ご自身で金銭についての相談ができる能力があったのではないでしょうか。
逮捕後の供述も「殺すつもりはなかった」など供述できていることから、ある程度の理解ができる方であることがわかります。
有料老人ホームむべの里合志はどんな施設か
事件の起きたむべの里合志は熊本県合志市の有料老人ホームです。
有料老人ホームといっても、住宅型の有料老人ホームですので、施設自体が介護保険サービスとしてケアを行うのではなく、外部の介護保険サービスを利用するという形式です。
デイサービスを併設していたり、併設の訪問介護のサービスを利用しながら生活をしていくことになります。また、サービスの計画は併設の居宅介護支援事業所のケアマネジャーがプランを作ります。
2015年の3月に開設した施設で、80室となっています。
費用については家賃・管理費・食費を含めて10.5万円。
熊本県合志市の相場についてはわかりませんが、特別費用の高いタイプの施設というわけではないと思います。
法人の本部は山口県にあり、複数の事業所・サービスを展開しています。
山口県外では、この有料老人ホームむべの里合志と、同じ合志市内の須屋という場所にも事業所があるようです。
有料老人ホームとの間での金銭トラブルとは?
金銭トラブルがどのようなものであったかはわかりません。
有料老人ホームの場合の金銭トラブルといえば、一時金や敷金という入居時に支払う費用が高額な場合が多く、退所時に返還されないなどの問題が非常に多くなっています。
ただ、この施設の場合は入居一時金については15万円となっており、それほど大きな金額ではないと感じますので、別のことが引き金になっているのでしょうか。
もしくは金銭管理をご家族等で行えない場合は施設で金銭管理をするというケースもありますが、そういったところでトラブルになっている可能性もあります。
どのような経緯で有料老人ホームへの入所に至ったのか、またその際にどのような説明がされていたのかというところがトラブルの発端になっている可能性もあります。
入居に際しての説明などは、伝えなければいけない内容も多く、契約書作成などの事務も発生するので、契約を行う家族にとっては非常に大きな負担になります。
ケアマネジャーに相談しても、施設によって対応が違う部分が多いため、結局は直接施設の相談員に相談するしかなくなってしまいます。
こういった場合、施設側の説明を十分理解できて入所できるかというと、理解が不十分なままで入所し、のちにトラブルとして表面化する場合も少なくありません。先に紹介した一時金トラブルなどもその一例です。
事前の説明なども紹介業者などを通して仲介してもらい、事前の説明などがあるとスムーズな場合もありますので、上手に活用していくことをお勧めします。
利用者が職員を殺害しようとする。これまでも・・・
特別養護老人ホームで起きた二つの殺人未遂事件
こういった事件はまったくありえないことではなく、以前にも同じような事件がいくつかありました。
特養の入居男性が介護職員の首を切りつけるという事件です。
この時も凶器になったのは包丁で、料理レクで使ったものが犯行に使われました。
他にもハサミで職員が刺されるという事件もありました。
こちらも特養で起こった事件です。
これら3つの事件、いずれも刃物が凶器として使われています。
介護施設で刃物を扱うというリスク
刃物があるということがリスクであることを認識することも必要だと思います。施設であれば、職員としてもある程度外敵からは守られた状態でケアをできるという意識が働くのかもしれません。
しかし、利用者が突然、敵意をむき出しにすることや殺意をもって行動するということが起こりえないわけではありません。
入居時は認知症もなく大丈夫なのかもしれません。ただ、その状態がいつまで続くか保証できるわけではありません。刃物の持ち込みを禁止することで、利用者と施設との間に緊張が生まれる可能性もありますが、このような事件は起こりうることであることを理解しなければいけません。
そして、施設は介護職員の身を守ることを考えていかなければいけません。
まずは、刃物の取り扱いについては十分に注意し、レクなどに使う場合も使った後は適切に管理することや、有料老人ホーム等での刃物の持ち込みについても刃物を使う時には共有の集合キッチンで使用する、刃物使用後には鍵をかけることなど、配慮することも必要なのではないでしょうか。
今回の事件では刺された介護職員の命に別状はなかったのが幸いです。
ただ、有料老人ホームの利用者が殺人犯となり、その家族が殺人犯の家族になって責任を負うリスクもあるのです。
介護人材がいなくなる。
利用者の権利ももちろん大事です。
自宅に近い生活を送るために包丁を持ち込む権利、あるかもしれません。
でも、このままでは、介護をする人が誰もいなくなります。
少ない給与で、腰痛などの労働災害リスクも高く、夜勤などもある不規則勤務で体力的にも厳しい。それでいて、介護をする対象者から命を狙われるリスクがある仕事なんて言ったら、だれも介護の仕事をしなくなるんじゃないでしょうか。
これは危機的な問題だと考えなければいけません。
利用者の権利も大事ですけれど、それを守るために職員を危険にさらすことも避けなければいけません。
貴重な介護人材を守るために職員が安心して働ける環境づくりをしていくことが必要です。
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