厚生労働省は29日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会を開き、給付と負担のあり方を見直す議論を始めた。介護サービス計画(ケアプラン)作成の有料化や介護の必要性が比較的低い軽度者へのサービスの見直しが焦点になる。部会での議論を踏まえ、2020年に提出を目指す介護保険法改正案に盛り込むか判断する。
日本経済新聞ウェブサイトより
厚労省は部会の検討事項として、ケアプランへの介護給付のあり方や、軽度者へのサービスのあり方、介護保険に加入する期間などを挙げた。年末までに取りまとめを目指す。
介護保険のサービスを受けるためには、介護のメニューを示すケアプランを作る必要がある。ケアマネジャー(介護支援専門員)に作成を支援してもらう場合、費用は全額介護給付でまかなわれ利用者の負担はないが、財務省は有料化を求めている。
部会では委員の判断が分かれた。連合出身の委員からは「利用者自らケアプランを作成することが増えれば介護の質の確保が懸念される」、認知症患者らを支える団体出身の委員からは「利用者負担の増加はこれ以上受け入れられない」と、それぞれ有料化に反対する声が上がった。一方、経団連出身の委員は「有料化は重要な論点。ぜひとも見直しが必要だ」と主張した。
軽度者への生活援助サービスを市町村に移管することや、介護保険に加入する期間の拡大も論点だ。だが、制度の見直しには慎重な意見が相次いだ。
毎度のことです。こうなることはわかっていました。
なぜいまこのような記事が出たかって、そりゃ選挙が終わったからですよ。
この記事の目次
選挙が終われば言いたい放題の与党。
自民党のやり方はいつも同じです。
選挙で勝てば国民の信任を受けたと、公約関係なくやりたい放題です。
先日、選挙の前にこのような記事を書きました。
個人的な予想としてこう書きました。
もちろん公約には耳障りのいいことしか書かないものですが、現在審議会等で検討が進められているものに関しては以下のようなものがあります。
・介護サービス自己負担を原則2割に。後期高齢者医療も原則2割
・居宅介護支援への自己負担導入
・軽度者の生活援助サービス利用は保険対象外
・法人の統合・淘汰による大規模化推進
・外国人介護職による人材確保このへんは否定も肯定もしていないので、導入されるものと思っていたほうがいいでしょう。
ヘルパータウン「 2019年参議院議員選挙、各党介護関連公約まとめ 」より
さっそく軽度者のサービス切り捨てや居宅介護支援の自己負担導入などが実施されようとしています。
毎回こんなやり口ですよ。
繰り返される、選挙後の制度改悪というシナリオ
このブログでもお伝えしてきましたが、例えば2017年の衆議院議員選挙。
選挙後にはこのようなニュースを掲載しました。
2016年の参議院議員選挙の後にも、利用者負担の拡大の議論がすぐに出てきましたね。
国政選挙が行われるたびにこうして国民の負担を重くしていく、福祉を後退させていくのが自民党の常套手段です。驚きもしなかったけれど、やるつもりだったら最初から公約しろと言いたい。
軽度者切り捨てへのカウントダウン
そもそも要介護2は軽度者か?
その中で軽度者の介護保険からの給付を市町村の総合事業に移行するという議論が出ています。
そもそも要介護1、2を軽度者と言っていいのかどうか、実態がわかっているのでしょうか。
こういう言い方もどうかと思いますが、要介護2だったら車いすか、もしくはバリバリ徘徊する立派な認知症エリートですよ。
転倒のリスクがあって常に見守らなきゃいけないしトイレ行くにも引っ張っていかなきゃいけない、
被害妄想で四六時中罵詈雑言浴びせられる、
いきなり殴りかかられる、物を投げつけられる、
ちょっと目を離したすきに外へ出ていき警察沙汰になっている、
それが要介護1・要介護2ですよ。
寝たきりでオムツ交換はしなければいけないけれど出ていくこともないし、介護に抵抗されたり殴り掛かられたりすることもない要介護5の介護をするのと、要介護2の介護をするの、どちらが楽でしょう。
はっきり言います、絶対に要介護5の方が楽です。
そんな要介護1・要介護2の介護を介護保険から外して総合事業に移行すると、どうなるでしょう。
介護についてちょっとかじった程度の一般市民のサロンなんて速攻で壊滅します。やってみればいいですよ。
介護の必要性が比較的低い軽度者へのサービス
っていうけれど、現場を知っている人から見れば、まったくそんなことはないです。
家族の介護負担が大きく、関わり方がうまくいかなければ大きな事故や悲惨な事件につながることも多い。
より高い専門性が求められる対象者だと考えるのが自然なのではないでしょうか。
要介護という言葉の後に続く数字が1や2だから小さく見えるだけです。要介護1・2を軽度っていう認識をやめた方がいい。
要介護1と要介護2のサービスを移行?
簡単に要介護1と要介護2、って言うけれど、簡単に移行できるような人数ではありません。
全国で介護保険の認定を受けている人は要支援も含めるとおよそ650万人となっています。
そのうち、要介護1が132万人、要介護2が112万人となっています。
つまり、介護保険認定者の37.5%を要介護1,2が占めているのです。
要支援1,2を合わせて要介護2までの認定を受けている人を軽度者というのであれば、66%。介護保険の認定を受けている人のおよそ3分の2を軽度者と呼んでいるのです。
いずれは施設サービス分しか介護保険で賄わないとか言い出しかねない。
要支援の利用者以上にニーズも複雑でサービス事業所間の連携も求められる要介護1・2のサービスを、総合事業に丸投げして、それでも介護保険は役割を果たしているというのでしょうか。
そもそも受け皿となる総合事業は育っているのか
介護保険から総合事業に移行するとしても、果たして地域はその受け皿として十分育っているのか。答えはノーです。
総合事業総合事業ってよく言われるけれど、実際、介護の現場で働いている人も訪問介護やデイサービスやケアマネの事業所で働いていないとわからない人も多いと思うので、すごいざっくりと、総合事業について簡単に紹介すると、
既存の介護事業者だけでは対応できない地域の介護ニーズに対して、ボランティア・NPO・民間企業などが協力しながらサービス提供を行っていくというものです。
詳しくはこちらを見てください。
自治会や老人会やらボランティアなど、市民団体などが積極的に手を上げ、多様な担い手として介護を支えるということが期待されていました。
けれど、結局要支援の方へのサービスを担っているのは大多数がもともと存在していた介護サービス事業者です。
自治体の働きかけが不十分なのか、地域の介護ニーズに対する認識が不足しているのか、地域のコミュニティがそもそも成熟していないのか。
いろいろ問題はあるのでしょうけれど、これに加えて要介護1・2の利用者を支えるためのサービス提供ができるかって、無理でしょう。
やっぱり出てきた。ケアプランの自己負担問題。
また、 介護サービス計画(ケアプラン)作成の有料化 の話も当然のように出てきました。
ケアマネ、目の敵にされっぱなしですね。
そう、ケアマネジメントオンラインでは選挙前にこんな記事を書いてましたよ。絶対忘れないぞ。
■国家資格化、“ケアプラン有料化”反対も
ケアマネジメントオンライン 2019/07/04 より
参考資料の位置付けとなる総合政策集「J-ファイル」では、「介護支援専門員の積極的活用」が掲げられ、「特に、居宅介護支援事業所の報酬の見直し・経営の独立性・中立性の推進・研修制度の充実を図るとともに、それらを促進するため、社会保障制度において重責を担う介護支援専門員の国家資格化を目指す」としている。
また、「居宅介護支援費に関しては、誰でも公平にケアマネジメントが受けられるように、介護保険制度で全額を賄う現行制度を堅持する」とし、財務省が提案する“ケアプラン有料化”に反対の立場を鮮明にした。
本当に自民党はケアプラン自己負担に反対の立場だったの?
はっきり言います。この記事、絶対嘘です。
2012年の時のJ-ファイルという資料に書いてあっただけで、今回に関してはそんなこと公約にもどこにも書いていませんよ。
国家資格化なんてするつもりも一切ないだろうし、ひょっとしたらケアマネの業務なんて廃止しようと思っていてもおかしくないでしょうね。
これ、ケアマネジメントオンラインの中の人は自民党に投票してほしかったんでしょうね。いや、大きな口では言えませんけど。
公平性が担保されなくちゃいけないケアマネの仕事でありながら、ケアマネの情報源であるサイトがそんなことをしているのですから。
ケアプランの自己負担化について書いた記事もご参照ください。
有料化問題はこれまでも何度も出てきているので、一応紹介します。
いい加減、国民は学習したほうがいい。今批判をしても遅いということを。
それでも、選挙で多数を獲得したのは自民党です。
政権公約を優先して実施するなんて一言も言わないわけですし、公約していないことについては「信任された」という感覚しかないわけです。
国民は政策を評価し、投票行動に失敗したら学習すること。学習の積み重ねがないから政治は未成熟なままです。
かつては野党に任せて失敗したんじゃない、マスメディアに踊らされて政策評価もしない投票行動をして失敗したんでしょ。
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