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70代人口に占める認知症の割合を6%減らす
政府は認知症対策大綱を策定しているようですが、その中に認知症高齢者を減らす数値目標が盛り込まれることになりました。
政府は17日までに、新たに策定する認知症対策大綱の原案を有識者会議に示した。70代の人口に占める認知症の人の割合を2025年までに現状より6%減らす数値目標を初めて設定。「認知症予防に資する可能性のある活動を推進する」といった文言を盛り込んだ。
数値目標を定め、認知症予防を積極的に進めることで、医療や介護にかかる財政負担増大に歯止めをかける狙いがある。6月に関係閣僚会議を開催し、大綱をまとめる。
認知症予防の具体的な取り組みとしては、高齢者が地域で交流できる「通いの場」の活用拡大、市民農園や森林空間、大学の公開講座などの場を最大限活用することを挙げた。
また、「現時点では、認知症予防に関するエビデンス(根拠)はいまだ不十分」と認めた上で、予防法の確立に向けたデータ蓄積を進める方針も掲げた。
「25年までに6%減=70代認知症、初の数値目標-政府大綱案」時事通信
認知症予防に注力するのはわかりました。ただ、具体的な取り組みと言えば、確実な根拠があるものは・・・。
認知症高齢者を減らす。数値目標を達成するのは簡単・・・
認知症高齢者の日常生活自立度判定
認知症高齢者を減らすのは実は簡単です。介護保険の意見書などで認知症高齢者の日常自立度を自立にチェックすればいいだけですから。
明確な基準があるわけではなく、医師の匙加減でこんなものはどうにでもできます。普段の生活を見ることができない医師が聞いた情報をもとに記載する日常生活自立度。明確な根拠も基準も不明瞭なこの判定が認知症高齢者の数の計測にも使われています。
ただ、具体的に数値目標が設定された以上、自治体はこの数値目標達成に躍起になるでしょうし、それによって自治体がインセンティブが受けられる可能性も高くなるのであれば、自治体から医療側に対して圧力がかかる可能性だってありますね。
大事なのは認知症高齢者を減らすことではない。
これだけ医療が発展しても認知症高齢者は増えているわけですから、劇的なイノベーションが起こらない限りは数値達成は無理だと思います。
大事なのは、認知症高齢者の数を減らすことではなくて、認知症になっても地域で穏やかに暮らしていける社会を作ることじゃないでしょうか。
政府がこんな考え方をしていると、
・認知症高齢者は社会の敵
という排除の論理がまかり通ってしまうのではないでしょうか。
現代の優生思想。
この発表の裏に見え隠れする未来投資会議のインセンティブ議論
認知症高齢者は減らせる、という根拠はどこから来たのか。
思うにこれは、平成28年11月の未来投資会議からではないでしょうか。
ここで、 竹内孝仁 国際医療福祉大学教授はこのような発言をしています。
平成28年11月 未来投資会議より
まず、自立支援介護、ちょっと耳なれない言葉だと思います。これの説明なのですが、一旦要介護になった人をもう一度自立状態に引き戻す介護でございまして、従来のものとは方法と理論が異なる新しい介護だと御理解いただきたいと思います。どれぐらい戻れるのかということ、これまでの実績から大ざっぱに検討してみると、現在の要介護者の約半数ぐらいは、要するに、半減ぐらいはできそうだと私は予想しているのですが、そのための仕組みづくりをこれからすごくやっていかないといけないということになります。
こういった主張を真に受けて、日本は自立支援介護を推進する方向性で動き出しています。
認知症は治せると主張している竹内理論を受けて、認知症予防の数値目標設定だったとも言えます。
認知症は本当に水で治るのか?
認知症は水で治る、水をたくさん飲めばボケは寄り付かない、といったセンセーショナルなキャッチで注目を集める竹内理論ですが、果たして効果が本当にあるのか。
竹内理論では1500ccを一日飲むように推奨しています。体格や基礎疾患など問わず、一律1500cc。
水で認知症が治る人は認知症ではなくて脱水によるせん妄じゃないかという意見も当然あります。
竹内理論を取り入れる施設も増える中、認知症高齢者はなぜ減らないのか。竹内理論の施設の入居者はなぜ半分に減らないのか?
エビデンスの検証が先でしょう。でも、それに異を唱える介護関係者があまりにも少ないことがもっと情けない。
認知症予防に効果があるもののエビデンスを探すことも大事ですが、エビデンスが確立している心不全や脳卒中の対策に力を入れるべきなんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
追記:厚生労働省、数値目標を削除
批判を受けて厚生労働省は認知症予防の数値目標を削除しました。
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