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12年間繰り返された不正請求
佐渡市が運営する佐渡市特定施設待鶴荘で、無資格のヘルパーが行っていた訪問介護を有資格者が行っていたと虚偽で報告しており、不正請求を平成18年からなんと12年もの期間で続けていたという報道がありました。
佐渡市は20日、市が運営する介護保険事業所「市特定施設待鶴(たいかく)荘」で、介護報酬の不正請求があったと発表した。不正は2006年11月から続けられ、昨年12月に県が実施した実地監査で発覚した。時効で消滅していない5年間の不正請求分として1186万円程度の返還と、加算金約184万円を国や県などに求められる可能性がある。
待鶴荘は訪問介護の仲介や入居者の食事の介護などを行う市の直営施設。市によると、入浴などの訪問介護サービスを無資格者が提供したにもかかわらず、有資格者の名前を使って記録を書き換えるなどして、介護報酬と利用者負担金を不正請求していた。収入を増やす目的で始めたという。
施設の介護職員が書き換えをやめるよう施設側にたびたび求めたが、不正は慣例として続けられた。
市の調査によると、直近5年間の不正請求は1万2600件。加算金を含め計約1370万円を返還する見込み。また、県からの処分として、4月以降の3カ月間、新規入居者の受け入れが停止となる見通しとなっている。
三浦基裕市長は20日、臨時記者会見を開き「市民の信頼を裏切る行為を起こし、深く反省するとともに、再発防止に取り組みたい」と陳謝した。関係者への聞き取り調査を今後も続け原因を究明する。
長年に渡り介護報酬を不正請求 佐渡市運営の事業所、無資格者がサービス提供
佐渡市長が行った記者会見の様子が佐渡市役所のyoutubeチャンネルにもアップされています。
12年も前からなので、誰が指示したのか、どういういきさつだったか、会見でも語られませんでした。
職員への聞き取りの中で、改善の提案も何度もされたようですが、慣例として受け入れられなかったと。法律に勝る慣例があるわけがないし、この感覚は明らかにおかしい。
市特定施設養護老人ホーム待鶴荘で訪問介護費の不正受給。どんな仕組み?
このニュース、そもそも特定施設のサービスなのにどうして訪問介護費の不正請求になるの?と疑問に思う方も多いと思いますので、この施設の性格をわかる範囲で。
養護老人ホーム
まずこの施設、養護老人ホームの位置づけになります。
養護老人ホームは主に経済的な事情や環境などの問題から在宅で生活できない高齢者が入所して生活する施設です。入所する方は必ずしも介護が必要な方ではないため、要介護認定を受けていない自立した方も多く住んでいます。むしろ、もともとは自立型の社会復帰を目的とした施設です。ただ、施設入所者も加齢などにより介護が必要になり、支援が必要になる方も増えています。また、特別養護老人ホームが利用者と施設との間の契約によって入所するのに対して、養護老人ホームは市町村による措置による入所施設となります。
佐渡市特定施設
待鶴荘は佐渡市特定施設という位置づけになっています。特定施設というと、一般的には介護付き有料老人ホームです。施設の職員として介護職員が勤務し、サービス提供を行います。基本的に外部サービスは利用できないので、特定施設の職員には介護支援専門員が配置されそこでケアプランの作成を行います。
この特定施設を設置運営していたのが佐渡市になります。
外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護
ここからが本題で、この施設は外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護という位置づけになっています。
本来特定施設の中ですべての介護サービスを提供しなければいけないのですが、現時点で介護が必要でない人も介護にかかる費用を支払わなければいけない、という場合があります。特に今回は養護老人ホームで、介護が必要ない入居者も多く暮らしています。
この外部サービス利用型の場合は、特定施設本体で行うサービスは生活相談・ケアプラン作成・安否確認と緊急対応となっています。
日常的な介護サービスは外部訪問介護事業所に委託してサービスを提供するという形になります。
今回の不正請求の仕組みは
つまり、今回の不正請求の仕組みは
・養護老人ホームの入居者が介護サービスが必要になり要介護認定を受けて特定施設の利用者として契約。
・外部サービス利用型のため施設内に設置されている訪問介護事業所からヘルパーが訪問していたがその中に無資格のヘルパーがいた。
・その事実を把握していたにも関わらず、12年間にわたり不正請求を続け、その金額は1186万円にものぼった。
ということになります。
介護報酬の不正請求。民間事業者ばかりが目の敵にされてきたが・・・
今回の不正請求、行ってきたのは佐渡市の直営施設です。市が不正請求をしているのです。
不正請求のニュースはこれまでも取り上げていますが、悪質性から考えると指定取り消しの処分であったもおかしくないという意見があってもおかしくないでしょう。
新規入所者の受け入れ停止という処分に関しては、施設の特性上、指定取り消しや効力停止ができないにしても、正直甘すぎるという批判があっても当然でしょう。
不正請求は金儲け目的で介護を食い物にしようとする悪意のある民間事業者だというイメージが強いかもしれませんが、実際はそうではありません。
問題なのは、圧倒的な人手不足と、そして救いようのないコンプライアンス意識の低さです。
介護に人が集まらないことから、人がいないからしょうがないといった自分勝手な甘えが生まれ、法令を無視する事業者が出てくるのではないでしょうか。
もう一度言うと、法令に勝る慣例なんてあっていいわけがない。
今一度、介護保険事業者はコンプライアンスの重要性に立ち返るべきではないでしょうか。
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