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虐待の疑いで刑事告発、京都の特別養護老人ホーム。その後。
先日紹介させていただいた京都府の特別養護老人ホーム安寿の里のニュースの続報です。
ここでも書かせていただきましたが、
この特別養護老人ホームでは
ベッドからの転落や不自然な骨折などが多数の利用者にみられるるということで、
刑事告発されていました。
法人理事長も「でっちあげではないか」と憤りを見せていました。
高齢者であれば外傷がなくても皮下出血や骨折が起きることだってあります。
その証拠もないのに虐待があると結論付ける報道には違和感しか感じませんでした。
よほど何かの確証がない限り、起こった現象だけを見て虐待と結論付けるようであれば、
「そうでなければ介護なんて仕事、やる人いなくなりますよ。」と書かせていただいていました。
そして、京都府警が立ち入った結果このようになりました。
特別養護老人ホームに刑事責任なし
京都府宮津市由良の特別養護老人ホーム「安寿の里」で、入居者への虐待疑惑が表面化して8カ月。京都府からの刑事告発を受理した府警は14日までに、介護職員らが暴力を振るうなどした事実は確認されず、施設側の刑事責任を問うことはできないと判断した。府が疑惑を公表して以降、同ホームは多数の職員が退職し、一部事業は休止に追い込まれた。運営法人は「行政判断が福祉現場に与える影響の大きさを自覚すべきだ」と苦言を呈した。一方、複数の入居者がけがをした事実は認め、入居者や家族に謝罪した。
虐待疑惑は、府が2月16日に記者会見して表面化した。介護・地域福祉課の担当者は「通常の介護ではできない傷」と強調し、施設職員による暴力行為があった可能性を示唆した。一方、施設側は「事故」と訴え、両者の主張は激しく対立した。
今回、府警は施設側の刑事責任は問えないと判断した。介護・地域福祉課は「会見当時の府の調査は十分でなかった」と認めつつ、「事案の件数や悪質性などを踏まえて適正に判断した」と説明。府の対応に問題はなかったとの姿勢を崩していない。
施設側の刑事責任なし。
そりゃそうでしょうね。
ただ、多数の入居者がけがをしているという事実は当然認め、
それは介護の技術の部分の問題なのか、施設のシステム的な問題なのか、職員同士のコミュニケーションの問題なのか、
いずれにしろ解決に向けて検討しなければいけない問題はあると思われます。
ただ、また別の問題も出ています。
犯罪者扱いされる介護職員
しかし、府が疑惑を公表して以降、施設職員の3割近くが「犯罪者扱いされるのは嫌」などとして次々と退職。施設は人員不足に陥り、ショートステイ事業を休止せざるを得なくなった。運営する社会福祉法人「香南会」(高知県香南市)の橋本信一理事長は「調査が不十分な中で、大々的に公表されたことは遺憾。入居者や家族、地域住民に大きな不安を与えた府の責任は重い」と憤る。
これ、非常に由々しき問題だと思います。
その施設で働いているというだけで犯罪者だと指さされる。
新聞紙面などメディアにも報道されるわけですから、誰も虐待の施設だと疑うことはないでしょう。
施設を利用している利用者家族や地域住民に与える影響は計り知れません。
さらに、そこで働く職員は、虐待をしているメンバーの一員とみなされるわけです。
虐待の確たる証拠もない報道ひとつで、
どれだけの影響があるのか、イメージすることはできないのでしょうか。
この影響で多数の退職者が出ているわけですし、
ただでさえ採用活動が難しい介護の現場で、
採用については「虐待の施設」というイメージがあればさらに厳しい状況に立たされるでしょう。
残った職員の業務負担も大きく、続けることができなくなる方も多いでしょうし、
キャリアプランとしても虐待施設の職員という肩書では影響は出てくるでしょう。
本当に、介護の仕事で働く人なんていなくなります。
メディアの報道は慎重でなければいけないですし、
それを受け取る側もその表面だけを見て判断するのではなく、その本質を見ることが重要です。
虐待テロが起きる?
今回の報道、考えてみれば非常に恐ろしいことだと思います。
ひょっとしたら、今回と同じようなケースで事故が起こることっていうのは
どこの施設でもありえます。
それをもとに、虐待と刑事告発し、保険者(行政)やメディアがノリノリで乗っかってきたら、
こんなことになるのです。
地域のライバル施設を蹴落としたい、
施設に対して嫌な印象を持っている、
なんて思いがあれば、
簡単にできてしまうわけです。
「虐待」というレッテルを貼ることで
その施設を崩壊寸前まで追い込むことだってできる、
まさに虐待テロですね。
こんなのがまかり通っているようでは地域は成り立ちません。
介護事故は悪なのか
もちろん、介護事故は限りなくゼロに近づけていく努力は必要です。
事故が続いたことは紛れもなくこの施設に何らかの問題があるからだと考えます。
けれど、多数の人が生活するスペースで、それが介護が必要な高齢者であって、
それで事故が絶対に起きないという環境を作るということは無理に近いと考えます。
事故=悪
虐待=悪
これを同列で考えてはいけません。
虐待はあってはいけないことです。
介護事故も確かにないに越したことはありませんが、
小さな事故はいつでも起こりうることです。
そこを検証して改善につなげていくことが介護施設として重要になります。
介護事故を隠蔽することは次の大きな事故につながっていきます。
今回の件も、看護師への報告がなかったことなどが問題視されていました。
介護事故のリスクを過剰に恐れることで、
入居者の自由が奪われたり尊厳が失われることも避けなければいけません。
事故と虐待はまったく異なるものですから、
きちんと報告できる環境づくりが必要です。
事故報告書を書くことを恥だと思わせる職場環境であればそれを改善しましょう。
次なる事故を防ぐために
今回は転落で骨折など重大な外傷を受けている利用者もおり、
介護の技術的な問題なども含めて、
安寿の里側の責任は間違いなく大きな問題として考えなければいけません。
ただ、虐待と断定するだけの証拠や材料がないのに、虐待認定されていることは問題視すべきです。
二人介助すべきところを一人介助していた、
ベッドから転落していた、
その事実で虐待認定していいのでしょうか。
ベッドから2度転落させたから虐待、
ベッドから転落しないように拘束したら当然虐待、
介護のマンパワーは無限ではありません。
施設に入所したら安全な環境で事故が無くなるかというと、
生活環境が変わることで事故が起こることもあります。
施設に預けたら万事解決するわけではなく、
施設でも事故は起こりうることを家族は理解しなければいけません。
必要に応じて職員と協力しながら専門医の受診であったり、問題の解決のためのサポートを行うことが大切です。
施設側は説明責任と迅速な対応が求められます。
さらに、この社会にも介護の人材不足という深刻な状況を解決していくことが求められています。
事故を起こしている施設側の責任は免れられるものではありませんが、
介護事故を施設と介護職員だけの責任で終わらせてはいけないですね。
ツイッターでの反応
2018.11.14
特別養護老人ホーム「安寿の里」虐待容疑。京都府と宮津市が内部調査。
府と市は90代女性への虐待を認定、その他16人についても虐待の可能性があるとして京都府警へ通報。それが一転、
施設側に刑事責任なしhttps://t.co/dFAWLmVnHX
— 歳森彰SSM(SilentStreetM (@aratori) 2018年11月16日
介護の現場で度々問題になる「虐待事案」
この宮津市の特別養護老人ホーム「安寿の里」ではどの様な対処をしていたのか。患者に危害が及びそうになった(ヒヤリハット)はこれまでなかった?あった場合どう対策した?スタッフにトラブル因子はなかった?目に余る行動も「見て見ぬふり」してなかった?— 葵橋🍀 (@703_muse) 2018年10月15日
京都府宮津市の特養 「安寿の⾥ 」の⼊所者17⼈が虐待を受けた疑いがある問題…。その後、どうなっているのだろう。
この事件は、事故・あるいは事件を組織的に隠蔽した形跡が捜査機関から指摘をされていたよね。真実ならば大問題だね。
真相究明が必要だと思う。#安寿の里 #香南会 #虐待 pic.twitter.com/3TKn5pU6SU
— 湊屋(みなとや) (@GiveTake_good) 2018年7月15日
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