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パーキングエリアで置き去りにされた認知症高齢者
認知症とみられる父親(79)を高速道路のパーキングエリア(PA)に置き去りにしたとして、兵庫県警有馬署は26日、大津市の無職の娘(46)を保護責任者遺棄容疑で逮捕した。「介護に疲れた。自分が面倒を見るより、警察に保護してもらい、施設に入る方がいいと思った」と容疑を認めているという。
発表では、娘は22日午後6時45分頃、神戸市北区の中国自動車道赤松PAで、父親を車から降ろしてコンビニエンスストアに行くよう指示した後、車を運転して立ち去り、置き去りにした疑い。娘は父親と2人暮らしだった。
約4時間後にPAのコンビニ店員から「迷っている高齢者を保護した」と県警に通報があり発覚。父親は住所などが言えない状態で、認知症とみられるという。父親が娘の氏名と以前の勤務先を話し、容疑者が特定された。
住所などは言えなかったものの、娘の氏名と以前の勤務先は言えたことが逮捕につながったということです。
それがわからなければ、ひょっとしたら身元が判明しなかったのかもしれません。
娘としては、身元の分かる情報は言えないだろうと考えていたのかもしれません。
そして、知らぬ顔で警察に行方不明の届け出を出すつもりでいたのではないでしょうか。
消えた高齢者問題、今も
以前にもこのブログで身元不明高齢者問題を取り上げたことがあります。
館林の老人ホームで保護されていた身元不明の認知症高齢者が、
NHKの放送をきっかけに家族と再会できたという出来事をきっかけに、
身元不明の認知症高齢者が数多くいるということで、
社会問題として取り上げられることがありました。
ひょっとしたら、置き去りにすることで、
身元不明高齢者として保護してもらえるだろうという考えがあったのではないでしょうか。
いまでも全国各地に身元不明で保護されている認知症高齢者が多数、養護老人ホームや特別養護老人ホームなどの施設で生活をしています。
厚生労働省では各都道府県ごとに保護している高齢者の情報を公表していますが、
それでも身元が判明しない高齢者が多いというのが現実です。
公表している情報が不十分なのか、
わかっていて家族が名乗り出ないだけというケースもあるのかもしれません。
介護サービスは利用できなかったのか
容疑者である娘は「介護に疲れた」と、置き去りにした事実を認めているようです。
現在は無職ということで、介護サービスを利用する経済的な面での余裕がなかった可能性も考えられます。
特養に入所することはできなかったとしても、
在宅サービスを利用していれば、介護疲れでここまで追い込まれることはなかったのかもしれません。
いや、利用していたのかもしれませんが。
「現代の姥捨て山」
こんな模倣犯が出ないことを願いたいと思います。
結果として、娘が逮捕され刑務所に入るとともに、
介護者を失った父親も施設に入所することになるのでしょう。
娘にパーキングエリアに置き去りされた恐怖はきっとこのお父様からはぬぐえないのかもしれません。
こういった悲惨な事件を繰り返さないためのセーフティネットは必要です。
介護保険の認定を受けて、ケアマネが担当につくことで救われる場合も数多くあります。
しかし、ケアプランの自己負担導入という重い足かせをつけることで、
ケアマネがセーフティネットとして機能できる場面が減ってしまうというリスクを
この国は本当にわかっているのでしょうか?
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