今回も前回同様、平成30年度介護報酬改定に関する審議報告(案)に関して、主要サービスごとの改正ポイントについて触れていきたいと思います。
前回は訪問介護について説明しましたが、今回は訪問介護同様報酬切り下げの大きなターゲットとなっている通所介護についてです。
通所介護は通所介護・地域密着型通所介護と両方まとめて報告が掲載されています。
この記事の目次
“自立支援”に対する評価
生活機能向上連携加算の創設
生活機能向上連携加算の創設
自立支援・重度化防止に資する介護を推進するため、生活機能向上連携加算を創設し、通所介護事業所の職員と外部のリハビリテーション専門職が連携して、機能訓練のマネジメントをすることを評価する。
具体的には、
・ 訪問リハビリテーション若しくは通所リハビリテーションを実施している事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設(原則として許可病床数200
床未満のものに限る。)の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、医師が、通所介護事業所を訪問し、通所介護事業所の職員と協働で、アセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成すること
・ リハビリテーション専門職と連携して個別機能訓練計画の進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて計画・訓練内容等の見直しを行うことを評価することとする。
これは前回の訪問介護の改正内容まとめでも紹介しましたが、医療機関のPT等の専門職と協働して行う訓練を評価するというものですね。
複数のサービス事業所を抱える大規模法人などでは比較的取り組みやすいかもしれませんが、
小規模事業所は地域の事業所とのネットワークづくりが重要になってきますね。
心身機能の維持に係るアウトカム評価の創設
心身機能の維持に係るアウトカム評価の創設
自立支援・重度化防止の観点から、一定期間内に当該事業所を利用した者のうち、ADL(日常生活動作)の維持又は改善の度合いが一定の水準を超えた場合を新たに評価する。
これはADLの維持または改善が一定の水準を超えた場合・・・という。
このアウトカム評価に関しては、バーセルインデックスを指標として用いることがすでに提言されています。
バーセルインデックスは下の表にあるような食事や歩行・トイレ動作など10項目の動作で、
できる動作をカウントし、合計100点満点でスコアをつけるというものです。
バーセルインデックスはあくまで「できるADL」を評価するもので、「しているADL」でないことには
当然批判はあるでしょうが、簡単に測定ができるというのが一番のポイントなのかもしれません。
もちろん、各事業所で測定するわけですから、今回は低めにして次回は高くポイントをつけておけば加算とれるな、とか、
そういった細工をする事業所も当然出てくるでしょう。
介護度で単純に評価するという仕組みへの批判はかなり大きいのですが、
通所介護の場合はもともと事業所評価加算という要介護度の改善とリンクする加算がありましたから、
評価方法さえ問題なければ、それほど抵抗なく加算の導入に踏み切れるのかもしれません。
これを足掛かりに、通所リハビリや訪問看護・訪問リハビリ、ひょっとしたら居宅介護支援でもアウトカム評価を導入していく可能性はあります。
機能訓練指導員の確保の促進
機能訓練指導員の確保の促進
機能訓練指導員の確保を促進し、利用者の心身の機能の維持を促進する観点から、機能訓練指導員の対象資格(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔
道整復師又はあん摩マッサージ指圧師)に一定の実務経験を有するはり師、きゅう師を追加する。個別機能訓練加算における機能訓練指導員の要件についても、同様の対応を行う。
機能訓練指導員の資格に鍼灸師を認めるという内容です。
それでもなお介護福祉士は認めないという。
鍼師が17万人、灸師が16.9万人。重複して持っている人が大半なんでしょうかね。
そもそもマッサージ師としてすでにデイで訓練指導員として勤務している人も多いでしょうから、
劇的に人員を確保しやすくなるということはないかもしれませんね。
栄養改善の取組の推進
栄養改善の取組の推進
ア 栄養改善加算の見直し
栄養改善加算について、管理栄養士1名以上の配置が要件とされている現行の取扱いを改め、外部の管理栄養士の実施でも算定を認めることとする。
イ 栄養スクリーニングに関する加算の創設
管理栄養士以外の介護職員等でも実施可能な栄養スクリーニングを行い、介護支援専門員に栄養状態に係る情報を文書で共有した場合の評価を創設する。
介護職員でも可能な栄養スクリーニングを行ってケアマネと情報共有した場合の評価ということで、
これは食事を提供しているデイであれば取り組める加算なのかもしれません。
大きく分けて自立支援への取り組みとしてこういった改正が行われます。
で、ここから先はあまりいい話題はないので覚悟しておきましょう。
時間区分の見直しと通常規模・大規模の報酬切り下げ
基本報酬のサービス提供時間区分の見直し
基本報酬のサービス提供時間区分の見直し
通所介護の基本報酬は、2時間ごとの設定としているが、事業所のサービス提供時間の実態を踏まえて、基本報酬のサービス提供時間区分を1時間ごとに見直すこととする。
さらっと書いていますが、今まで5-7時間、7-9時間といった2時間ごとに設定されていた時間区分を1時間ごとに設定すると。
多くのデイサービスでは7時間以上であれば、7時間10分とか、時間の枠ギリギリで時間設定をしていたかと思います。
要介護1であれば7-9で通常規模で656単位。
これが、7-8、8-9と分けられ、8-9は656単位だとしたら、7-8は610単位程度になると。
現行のまま通所介護事業を継続したとすれば、黙っていてもひとりあたり40~50単位程度は減っていくわけです。
事業所の規模などにもよりますが、常勤一人分雇えちゃう程度の売り上げはそっくり消えてしまう可能性が高いです。
この改正はえげつないですね。
これに対して、サービス提供時間を延ばすのか、報酬ダウンを受け入れコスト削減を徹底するのか、算定できる加算を狙っていくのか、
通所介護事業所も大きな岐路に立たされています。
規模ごとの基本報酬の見直し
規模ごとの基本報酬の見直し
通所介護の基本報酬は、事業所規模(地域密着型、通常規模型、大規模型(I)・(II))に応じた設定としており、サービス提供1人当たりの管理的経費を考慮し、大規模型は報酬単価が低く設定されている。しかし、直近の通所介護の経営状況について、規模別に比較すると、規模が大きくなるほど収支差率も大きくなっており、また、管理的経費の実績を見ると、サービス提供1人当たりのコストは、通常規模型と比較して、大規模型は低くなっている。
これらの実態を踏まえて、基本報酬について、介護事業経営実態調査の結果を踏まえた上で、全体として事業所の規模の拡大による経営の効率化に向けた努力を損なうことがないようにするとの観点も考慮しつつ、規模ごとにメリハリをつけて見直しを行うこととする。
メリハリをつける、っていうのは言い換えれば減らせるところの報酬を減らしますよってことです。
前回は小規模を狙い撃ちにし、事業所の大規模化・サテライト化を促進させたと思えば、
今度は通常規模・大規模の収支がいいとみるやすぐさまそこにターゲットを移す。
まさにモグラたたきです。
時間区分ごとの報酬削減と合わせて、今回の改正では通常規模・大規模の通所にとっては大きなダメージとなりそうです。
その他
運営推進会議の開催方法の緩和(地域密着型通所介護のみ)
地域密着型通所介護の運営推進会議の効率化や、事業所間のネットワーク形成の
促進等の観点から、現在認められていない複数の事業所の合同開催について、以下の
要件を満たす場合に認めることとする。
i
利用者及び利用者家族については匿名とするなど、個人情報・プライバシーを保護すること。
ii
同一の日常生活圏域内に所在する事業所であること。
設備に係る共用の明確化
通所介護と訪問介護が併設されている場合に、利用者へのサービス提供に支障がない場合は、
・ 基準上両方のサービスに規定がある事務室については、共用が可能
・ 基準上規定がない玄関、廊下、階段などの設備についても、共用が可能であることを明確にする。
その際、併設サービスが訪問介護である場合に限らず、共用が認められない場合を除き、共用が可能であることを明確にすることとする。
このへんは割愛します。
共生型通所介護
共生型通所介護
ア 共生型通所介護の基準
共生型通所介護については、障害福祉制度における生活介護、自立訓練、児童発達支援、放課後等デイサービスの指定を受けた事業所であれば、基本的に共生型通所介護の指定を受けられるものとして、基準を設定する。
イ 共生型通所介護の報酬
報酬は、以下の基本的な考え方に基づき設定するとともに、生活相談員(社会福祉士等)を配置し、かつ、地域との関わりを持つために地域に貢献する活動(地域の交
流の場の提供、認知症カフェ等)を実施している場合に評価する加算を設定する。また、通所介護事業所に係る加算は、各加算の算定要件を満たした場合に算定できる
こととする。
(報酬設定の基本的な考え方)
i 本来的な介護保険事業所の基準を満たしていないため、本来報酬単価と区分。
ii 障害者が高齢者(65歳)に到達して介護保険に切り替わる際に事業所の報酬が大きく減ることは、65歳問題への対応という制度趣旨に照らして適切ではないことから、概ね障害福祉制度における報酬の水準を担保する。
共生型介護については訪問介護同様に、65歳の壁問題について取り組んでいくということで、
介護保険対象の年齢になっても同じ事業所に通所利用が続けられるようにするということは大きなメリットがあると思います。
逆に介護保険事業所としては65歳になることで取り込めていた利用者層を失うことにもなります。
介護職員処遇改善加算の見直し
介護職員処遇改善加算の見直し
介護職員処遇改善加算(IV)及び(V)については、要件の一部を満たさない事業者に対し、減算された単位数での加算の取得を認める区分であることや、当該区分の取得率や報酬体系の簡素化の観点を踏まえ、これを廃止することとする。その際、一定の経過措置期間を設けることとする。
といったところが大きな改正ポイントになります。
療養介護や認知症通所介護についても、共通する内容が掲載されていました。
療養通所の定員数の見直しが行われる以外は、特別な改正ポイントは内容です。
通所介護・地域密着型通所介護に関しての改正ポイントを簡単にまとめると、
・生活機能向上連携加算を作るからリハ職と連携して自立支援の推進を
・バーセルインデックスでのアウトカム評価で一定水準を超えた事業所は評価します
・管理栄養士がいなくても介護職による栄養スクリーニングを行えば評価します
・報酬の時間区分を1時間ごとに細分化するという名目で報酬カットします
・通常規模・大規模は収支も安定しているみたいなので報酬カットします
・障害のサービス事業所も介護保険の共生型通所介護として算定し、65歳の壁問題に取り組みます
といった内容です。
今回、通常規模・大規模をターゲットにしているという風潮もありますが、
地域密着型に移行した小規模にとっても時間区分の変更で大きな報酬ダウンは免れません。
通所に関しては今後も特定事業所集中減算も継続されるわけですから、
地域の他事業所との幅広いネットワークが生き残り戦略のカギとなるでしょう。
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