入居者9名死亡、岩手県岩泉町グループホーム楽ん楽んの被害から何を学ぶべきか。

グループホーム楽ん楽ん、台風10号の被害

<台風10号>避難勧告出さず 過信と甘さ

 なぜ、避難勧告は出なかったのか。台風10号による川の氾濫で、入所者とみられる9人が死亡した岩手県岩泉町乙茂の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」。町は台風接近に備え、早めに町内全域対象の避難準備情報を発表したが、乙茂地区に避難勧告や指示を出す判断に至らなかった。「大丈夫だ」。悲劇への経過をたどると、行政と施設側双方に過信と見通しの甘さが浮かび上がる。
 「自然災害で見逃しは許されない。町には広く避難勧告を出してほしかった。責任は重い」
 1日午後、「楽ん楽ん」を視察した政府調査団長の務台俊介内閣政務官は厳しい口調で指摘した。
 町は8月30日午前9時、小本(おもと)川の氾濫に備えて町内全域に避難準備情報を発表。同日午後2時には町北部の安家(あっか)地区に避難勧告を出した。伊達勝身町長は「東日本大震災前に安家地区で水害があったため出した」と説明する。
 町役場では同日、幹部らが避難勧告を巡って随時協議を続けたが、結論は「大丈夫だろう」だった
 台風が接近してきた夕方には、町長が自ら現場付近を歩いて川の水位を確認。「楽ん楽ん」側からも「大丈夫だ」と連絡があり、問題がないと決めた。
 役場に戻った後、川は急激に増水。9人の命が失われた。「甘かった。反省している」。不測の事態に対応できなかった伊達町長はこう語るしかなかった。
 「楽ん楽ん」側も災害への危機感が薄かったことがうかがえる。
 避難準備情報について国は、発表された段階で要援護者は避難させなければならないと定義付けている。
 施設を運営する医療法人社団「緑川会」の佐藤弘明常務理事は「その認識はなく、避難勧告や避難指示が出れば避難すれば良いと考えていた。認識が甘かった」と打ち明ける。
 「楽ん楽ん」は火災を想定した避難訓練はしていたが、水害対応の訓練は取り組んでいなかった
 隣接する介護老人保健施設「ふれんどりー岩泉」を開設した2000年以降、小本川が氾濫したのは3回。あふれた水が施設に到達するまでに、かなりの時間があった。
 佐藤常務理事は「これまでの経験から、危ないと思ったときには、ふれんどりーに入所者を避難させれば良いと思った。大丈夫だろうと過信した私の責任だ」と釈明した。
 国は今後、連絡が取れない住民17人の安否確認に向け、町を支援する方針。務台政務官は「町、施設、それぞれの責任がある。悲惨な事例だが、教訓としていくことが必要だ」と話した。

写真を見てもその水害の凄まじさを物語っています。
グループホームの入居者9名が全員死亡するという悲惨な状況。
それをどうすることもできなかった職員。

確かに避難勧告が発令されていなかったことは事実ですが、対応が遅れていたことが致命的だったことは間違いありません。
グループホームの職員一人だけ、応援の職員も得られず、残った職員は入居者を避難させることもできなかった。
水位が上がり、利用者が息絶えていくのは恐怖でしかなかったことでしょう。

私たちが学ばなければいけないのは、
避難勧告や警報だけを基準に行動するのではなく、
利用者を守る責務は自分たちにあることを強く受け止め、
決断するべき時には勇気をもって行動していかなければいけないということです。

応援をひとりでもグループホームに配置していれば、
もっと迅速に屋外の状況の異変を確認することもできたかもしれないし、
救急要請などができたかもしれない。

グループホームに避難訓練を義務付けるだけでは、火災や地震を想定したものだけにとどまってしまうので、
その立地などによっては水害なども想定した取り組みを促していかなければいくべきでしょう。

記事編集・監修

 

介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト

居宅介護支援事業所管理者・地域包括支援センター職員・障碍者施設相談員など相談業務を行う。

現在はキャリアを生かした介護に関するライティングや介護業界に特化したウェブ制作業を行う。

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