入所者暴行死 介護福祉士に懲役8年判決
4年前、埼玉県春日部市の特別養護老人ホームで95歳の入所者に暴行を加え死亡させたとして、傷害致死の罪に問われている介護福祉士の男の裁判の判決で、さいたま地方裁判所は「本来、被害者を守る立場にある介護士による犯行で、強い非難に値する」として、懲役8年を言い渡しました。
埼玉県松伏町の介護福祉士、大吉崇紘被告(30)は、平成22年、春日部市の特別養護老人ホームで入所者の95歳の女性に暴行を加えて死亡させたとして傷害致死の罪に問われました。
28日の判決で、さいたま地方裁判所の河本雅也裁判長は「事件の前、入居者の容体の異変にいち早く気がついて褒められた経験があり、職場での自分の評価を上げるため、異変の発見者となろうと無抵抗の被害者に一方的な暴力を加えた。本来、介護士として被害者を守る立場にありながら動機は身勝手で強い非難に値する」と指摘し、懲役10年の求刑に対して懲役8年を言い渡しました。
以前にも紹介した特養での暴行致死事件の判決です。
判決では、「本来、被害者を守る立場にある介護士による犯行で、強い非難に値する」という強い表現もみられています。
被告も暴行の事実を認めており、懲役8年という刑が言い渡されました。
ただ、この事件、覚えている方も多いかと思いますが、
同時期にこの施設では同じように被告の勤務時に亡くなった方が他にも二人おり、もう一人は怪我を負っています。
しかし、嫌疑不十分として、裁判にかけられたのは95歳の女性入所者についての暴行致死の事件のみでした。
遺族のコメントなどが記事になっています。
遺族として法廷に立てないのか 春日部特養施設不起訴事件の真相は 埼玉
フラワーヒルでは、大吉被告が勤務を始めた直後の同年2月15~18日の4日間で、入居者3人が死亡、1人がけがをした。県警は判決が言い渡された事件のほか、84歳の女性への傷害容疑と、78歳の女性への傷害致死容疑でも大吉被告を立件したが、さいたま地検はいずれも不起訴処分(嫌疑不十分)とした。死亡したもう1人については事件化されていない。このうち、78歳の女性の次男が今年2月、処分を不服とし、さいたま検察審査会に審査を申し立てている。
公判を傍聴した次男は「2人への暴行が裁かれないことを分かった上で、情状酌量を求めるために暴行を認めたのでは」と話す。
事件発生当時の行政の対応も不信感を募らせるものだった。施設は入居者の死傷事案が相次いだ後、大吉被告による虐待の可能性を春日部市に報告。しかし、市は大吉被告に直接の事情聴取はせず、書面での回答のみで調査を終えていた。昨年11月には、身内の市幹部のみで構成された「検証委員会」が、「おおむね対応は適切だった」とする結論を出している。
次男はこうした関係機関の対応に、高齢者虐待防止法などの本来の趣旨が生かされていないと指摘し、改善の必要性を訴えている。
「どうして私も遺族として法廷に立てなかったのか、納得できない」
のんびりと余生を過ごすはずだった母親が、信頼していた介護職員に暴行されて死亡したとすれば、「真実を知りたい」と思うのは当然だ。だが、複数の事件の経緯が闇に埋もれかけようとしている。大吉被告の弁護人は判決後、「厳粛に受け止めるしかない。控訴するかは本人と相談して決めたい」と話している。
法廷にかけられた事件については素直に罪を認めることで、求刑10年が8年に減刑されています。
さて、裁判の場に上がることのなかった残り二名の死亡について原因が究明されるときが来るのでしょうか。
最近のコメント