特別養護老人ホームの「逆格差」 大都市ほど経営難
◇背景に高物価、高賃金
00年度に始まった介護保険制度で、都内の特別養護老人ホームが、深刻な「逆格差」に直面している。地方自治の世界では「都市富裕論」「地方の衰退」が通説だが、介護の世界、とりわけ特養ホーム業界では逆に、都会の方が厳しい経営難にさらされているというのだ。その原因を探ると、「独り勝ち」と言われる大都市・東京ならではの事情が浮かび上がった。【夫彰子】
■介護報酬の相次ぐ引き下げ
介護保険制度の開始後、介護報酬が初めて改定されたのは03年4月。この時、賃金や物価の下落傾向を受けて全体で2・3%の引き下げがあり、特養については4%の大幅ダウンとなった。
次の06年4月改定ではさらなる引き下げは免れた。しかし半年前の05年10月、施設系サービスで食費や居住費の利用者負担がスタートし、代わりに介護報酬が減額された。その結果、全国平均で1施設当たり差し引き3・3%の収入減となり、施設にとっては引き下げと同じ効果をもたらした。
厚生労働省は「特養ホームは経営が好調」と説明する。厚労省の介護事業経営実態調査によると、05年4月時点で特養ホーム1施設の1カ月当たりの損益割合は、全国平均で収入が支出を13・6%上回る大幅な黒字だった。食費・居住費の見直しによる減収後も10%超の黒字で、厚労省の主張を後押しする。
■東京の実情
ところが都内に目を転じると、黒字幅は5・7%と全国平均を大きく下回る。都独自の運営費補助金を除くと、3・1%まで下がる。
最初の改定があった03年度決算で既に、全237施設の32%に当たる76施設は、補助金がなければ赤字転落という状態で、34施設は補助金を加味しても赤字だった。全国平均並みの10%超黒字を達成した施設は、「補助金あり」で2割、「なし」では1割を切った。
「逆格差」を生む主な要因が、高い物価とそれに伴う高い給与だ。
総務省によると、東京23区における04年の平均消費者物価指数は、全国平均より10%超高い。地価も全国平均比で住宅地が5・5倍、商業地が8・8倍と高く、特養ホームの運営に欠かせない土地・建物費の負担が大きいことがうかがえる。
大都市になれば、当然土地も高く、建設コストも大きい。
さらに、物価も高いため、人件費も、その他さまざまな面でコストが大きくなります。
介護の仕事を離れて賃金の高い別業種に転職する人材も多いため、
人も集まらず、求人にかかるコストも膨らみ、ますます悪循環に陥ります。
介護報酬の減算でますます苦境に立たされる大都市圏。
特に東京は深刻です。
こんなフォーラムが週末に予定されているので、興味のある人はぜひ。
『都民フォーラム「東京の介護が危ない~深刻化する人材不足・どうなる老人ホーム~』
10月12日(金)に中野のなかのZEROにて開催予定だそうです。
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