介護保険施設、身体拘束の3割「違反」 人手不足が一因
特別養護老人ホームなど全国の介護保険施設で入所者が受けた身体拘束のうち、約3割は生命の危険性など「緊急性」がなかったことが、厚生労働省の初の全国調査でわかった。身体拘束は、安全確保を理由に介護をする側の都合で不必要に行われていると指摘されてきたが、その実態が浮かび上がった。同省は06年度の介護報酬の見直しで、拘束廃止への取り組みがない施設への報酬を減らすことも検討している。
全国の特養、老人保健施設、介護療養型施設の計1万2000カ所に調査票を送り、今年2月21~27日の1週間に身体拘束された人の数と拘束された日数、状況などを聞いた。約5800施設から回答があった。
身体拘束された人(被拘束者)は計2万1184人。施設別では、特養8650人、老健6058人、介護療養型6476人だった。
入所者が拘束された日数の合計を、全入所者の延べ入所日数で割った新しい指標「拘束率」は全体で5.2%。施設別では、介護療養型が9.9%と最も高く、特養は4.5%、老健は4.3%だった。
被拘束者の2人に1人は介護が必要な程度が最も高い要介護5で、要介護4と合わせると87.6%。重度の認知症(痴呆(ちほう)症)や寝たきり度の高い人がほとんどだった。
介護保険施設の運営基準では「生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合」を除き、行動を制限する身体拘束を禁止している。部屋に施錠する、手足をひもで縛る、など対象は11種類ある。拘束する場合も、(1)切迫性(2)拘束以外の介護方法がない非代替性(3)一時性の3原則をすべて満たす必要がある。だが、これら「例外3原則」を満たさず、基準に違反するケースが全体の32.1%あり、介護療養型は36.3%、特養と老健は各約30%だった。
身体拘束の方法は「ベッドを柵(さく)で囲む」が47.8%で最も多く、「ずり落ち・立ち上がり防止のためのY字型拘束帯・腰ベルト・車いすテーブル」が22.1%だった。
拘束した理由は「生命などが危険でほかに方策がなかった」が51.2%で最も多かったが、「生命などの危険はあったが人手があれば拘束は不要だった」とする答えも30.2%あった。
「身体拘束を一切行わない」との方針を掲げる施設の84.5%は全く拘束をしていなかったが、「個々の担当者の判断で処理」とした施設では、4割近くで、拘束率が20%を超えた。
簡単に言うと、
人手不足などの理由で「やむを得ず」行っている身体拘束のうち、
その3割には正当性が認められなかった、ということです。
高齢者虐待防止法が制定され、来年四月からは法律が施行されます。
それでもなお、不当な身体拘束が横行しているのが現実です。
ただ、身体拘束撤廃に向けて積極的な施設に関しては、
ほとんどが身体拘束を行っておらず、
逆に現場任せにしている施設では身体拘束が横行しています。
つまり、施設運営側の身体拘束廃止へ向けてのリーダーシップが必要ということですね。
人権擁護を業とする介護福祉が人権を守らなければ、いったいそれを誰が守るというのでしょう。
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