介護サービス事業所・施設等に勤務する職員に対する慰労金の支給について、Q&Aが示されました。
対象となる人がかなり具体的になりましたので、紹介したいと思います。
この記事の目次
介護サービス事業所・施設等に勤務する職員に対する慰労金の支給事業とは
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業
今回の慰労金ですが、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業という事業のメニューの一つとして行われます。
緊急包括支援事業は医療分と介護分とに分かれます。
介護分では、大きく4つのメニューがあります。
・感染対策の徹底支援
・サービスの再開に向けた支援
・都道府県への支援
・介護施設・事業所に勤務する職員に対する慰労金の支給
となっています。
そのうちのひとつがこの慰労金支給です。
新型コロナウイスる感染症に対応した職員だけに限らず、すべての介護サービス事業所の職員が慰労金を受給する対象者となっています。
以前の記事でお伝えした通りです。
慰労金支給事業以外のメニューもものすごい規模で行われるので、
「どうしちゃったの?厚生労働省」っていう驚きも隠せませんが、今回は慰労金について紹介していきます。
ちなみに、介護分と同様、医療分も慰労金の支給事業がメニュー化されており、医療従事者等は医療分が対象になります。
兵庫県ではもらえないって本当?
「兵庫県ではもらえないって聞いたけど、本当?」と心配されている方もいるようです。
その発端は兵庫県知事のこのコメントにあります。
医療や介護関係者に支給される慰労金をめぐって、兵庫県の井戸知事は、新型コロナウイルスの対応と関係のない医療従事者らにも5万円を支給するとした国の方針に対し、「説明がつかない」として、県としては支給の対象に含めない方針を示しました。
(中略)
支給は、都道府県を通じて行われますが、兵庫県の井戸知事は、記者会見でこのうち5万円の支給について、「国の慰労金事業の明確な取り扱いの実施要領が出てくると期待していたが、あまりにも明確ではない。われわれが対象を判断するが、説明がつかないような、慰労金なら『なんでもいいや』という話にはならない」と述べました。
NHKニュースWEBより
そのうえで、井戸知事は、「国が言うように、何にもしていないのに、なんで慰労金を出すのか。まったく説明がつかないような税金の使い方は兵庫県としてはやる気はない」と述べ、感染者に対応していない機関や施設は支給の対象に含めない方針を示しました。
このように、兵庫県では支給しない、という報道がありました。
正確には新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者への対応をしていない事業所の職員への5万円は支給しないという発言です。
兵庫県の井戸知事はその後も、新型コロナウイルスの感染拡大について、東京が「諸悪の根源」と発言し物議になるなど、問題になっています。
その後、厚生労働省も兵庫県知事の発言を受けて、すべての対象者に慰労金を支給するよう再度説明を行っています。
医療や介護関係者に支給される慰労金をめぐって、兵庫県が国の方針と異なり、一部を支給対象に含めない方針を示したことを受け、厚生労働省はすべての対象者に慰労金を配るよう県に求めることにしています。
(中略)
この1人5万円の支給について、兵庫県の井戸知事は6日の記者会見で、国の実施要領が明確でないとしたうえで「何にもしていないのに、なんで慰労金を出すのか」と述べ、支給の対象に含めない方針を示しました。
これについて厚生労働省は「感染防止に取り組みながら、重症化するおそれのある患者や高齢者に接して地域医療や介護を支える人たちを慰労するのが事業の目的だ」としたうえで、「すべての対象者に配っていただけるよう引き続き兵庫県に趣旨を伝えていく」とコメントしています。この事業は全額が国費で賄われますが、実施主体は都道府県になるため、県の判断に任せざるをえないということです。
NHKニュースWEBより
厚生労働省によりますと、今月中に都道府県から予算の交付申請を受けることになっていますが、今のところ兵庫県のような方針を示した都道府県はないということです。
てめえ(兵庫県)の金じゃなくて、全額国費だよ。それを偉そうに何にもしていない奴には支給しないとか。
何かをしたから慰労金を支給するというものではなく、これは実施要綱を見てもらえればわかるはずです。
国から都道府県に示された実施要綱にはこのように書いてあります。
①感染すると重症化するリスクが高い利用者との接触を伴うこと、
②継続して提供することが必要な業務であること、及び
③介護施設・事業所での集団感染の発生状況を踏まえ、相当程度心身に負担がかかる中、強い使命感を持って、業務に従事していることに対し、慰労金を給付する。
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)実施要綱より
新型コロナウイルスの対応を何かしたからではなく、心身に負担がかかる中業務に従事していることに対して慰労金を給付すると書いてあるじゃないですか。
新型コロナウイルスの対応を何もしていないから支給しないという考え自体がそもそも間違っています。
その後も兵庫県では申請書にチェック項目を設けて対象者を絞るなどの説明をしていますが、果たしてどうなることでしょうか。
慰労金をもらえる人、もらえない人。
では、この慰労金。どこまでが対象になるかというと、介護職員に限定されず、介護施設や介護サービス事業所に勤務し、利用者と接するすべての職員が対象になっています。
(ア)慰労金の給付対象となる職員は、(I)及び(II)に該当する者とする。
(I) (1)①アの介護サービス事業所・施設等に勤務し、利用者と接する職員 ※ ただし、介護予防・生活支援サービス事業の事業者であって、当該地域における緊急事態宣言発令中に市町村からの要請を受けて業務を継続していた事業所については、対象となる。
(II) 次のいずれにも該当する職員
① 介護サービス事業所・施設等で通算して 10 日以上勤務した者
※ 「10 日以上勤務」とは、介護サービス事業所・施設等において勤務した日が、始期より令和2年6月 30 日までの間に延べ 10 日間以上あることとする。
※ 「始期」は、当該都道府県における新型コロナウイルス感染症患者 1 例目発生日又は受入日のいずれか早い日(新型コロナウイルスに関連したチャーター便及びクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」患者を受け入れた医療機関等の所在地の都道府県においては、当該患者を受け入れた日を含む。)とし、第1例目発生日が緊急事態宣言の対象地域とされた日以降の都道府県、又は第1例目発生がなかった都道府県においては、当該都道府県が緊急事態宣言の対象地域とされた日とする。
※ 年次有給休暇や育休等、実質勤務していない場合は、勤務日として算入しない。
② 慰労金の目的に照らし、「利用者との接触を伴い」かつ「継続して提供することが必要な業務」に合致する状況下で働いている職員(派遣労働者の他、業務受託者の労働者として当該介護サービス事業所・施設等において働く従事者についても同趣旨に合致する場合には対象に含まれる。)(イ)慰労金の給付は、医療機関や障害福祉施設等に勤務する者への慰労金を含め、1人につき1回に限る。
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)実施要綱より
それでは細かくQ&Aも含めて実施要綱の内容を見ていきましょう。
対象となるサービス事業所は?
実施要綱に書いてある(1)アに該当するサービス事業所は以下の通りです。
※1 訪問介護事業所、訪問入浴介護事業所、訪問看護事業所、訪問リハビリテーション事業所、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所、夜間対応型訪問介護事業所、居宅介護支援事業所、福祉用具貸与事業所及び居宅療養管理指導事業所
※2 通所介護事業所、地域密着型通所介護事業所、療養通所介護事業所、認知症対応型通所介護事業所及び通所リハビリテーション事業所
※3 短期入所生活介護事業所及び短期入所療養介護事業所
※4 小規模多機能型居宅介護事業所及び看護小規模多機能型居宅介護事業所
※5 介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設、認知症対応型共同生活介護事業所、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅
注 各介護予防サービス及び介護予防・日常生活支援総合事業(指定サービス・介護予防ケアマネジメント)を含む。
(以下、※1~5を総称して「介護サービス事業所・施設等」という。)
ということで、すべての介護サービス事業所が該当していますが、それ以外にもサービス付き高齢者向け住宅や地域包括支援センターも対象に含まれています。
福祉用具貸与やケアマネなど、直接介護を行わない職員も対象になっていることも「利用者に接する」職員であれば支給対象になるのがポイントですね。
訪問看護ステーションは医療分の対象?介護分の対象?
訪問看護ステーションのように、介護保険の指定も医療保険の指定も受けている事業所は、介護分・医療分どちらで申請をしたらいいのか?二重に受け取れるのか?という疑問に関しては、Q&Aでこのように回答しています。
A138
二重給付とならなければ、どちらから申請しても差し支えありません。
慰労金Q&Aより
医療で申請しても介護で申請してもいいようですが、同じ人が二重で受けることはできないようです。居宅管理指導とかもそうですね。
同様に、複数の事業所で働いている人も二重給付できません。介護保険と障害と二つの事業所で勤務している場合でも一回しか申請できないので注意しましょう。
利用者と接する、の考え方
サービス事業所に勤務していても、介護業務ではない人。これはどこまで対象に含まれるのか。具体的な内容について、Q&Aでの回答を拾っていきます。
事務職員でも臨時的に利用者と接する場合は対象になる?
事務職員で窓口で利用者と接する場合や集金対応をする場合などは「利用者と接する」に該当するのか。その回答はこのようになっています。
A60
お見込みのとおりです。利用者との接触とは、身体的接触に限られるものではなく、対面する、会話する、同じ空間で作業する場合も含まれます。利用者がいる建物から離れた別の建物に勤務し、物理的に利用者に会う可能性が全く無いような場合は対象とはなりません。
また、利用者と接触する日が1日でもあれば対象となります。なお、最終的な判断は都道府県が行うこととなりますが、一義的には各事業者で判断いただくことになります
慰労金Q&Aより
利用者と全く会う可能性がない本部などの場所で勤務する人は対象にならないものの、事務職員でも対象になることが示されています。
利用者と一日でも接触する日があれば「利用者に接する職員」として対象になるという考え方です。
調理員や清掃員、宿直員、送迎の運転手は対象になる?
特に職種を限定していないので、どのような職種でも利用者と一日でも接しており、10日以上の勤務があれば支給対象となります。
A66
対象職種には限定はありません。申請様式において確認するとともに、各事業所においては都道府県からの求めがあった場合に関係書類が提出できるよう適切に保管する取扱とします。
慰労金Q&Aより
ボランティアは対象になる?
ボランティアは対象になりません。
A70
実施要綱のとおり、要件に該当した職員、派遣労働者、業務受託者において対象となります。ボランティアについては対象となりません。
慰労金Q&Aより
10日以上勤務のカウント方法
10日以上勤務という条件があります。
その都道府県で感染者が最初に報告されてから6月30日までの間に、通算で10日以上勤務していることが条件になっています。感染者が発生していない地域の場合や、緊急事態宣言の対象地域になった後に最初の感染者が報告された地域は緊急事態宣言の対象地域に含まれた日から対象になります。
全国に緊急事態宣言が拡大したのが4月16日なので、少なくとも4月16日から6月30日までの間に通算10日以上勤務していれば対象になります。
夜勤は1日とカウントするの?2日とカウントするの?
夜勤で日をまたぐ場合はどのようにカウントするのか。Q&Aで示されています。
A89
慰労金支給に係る勤務日のカウントについては、夜勤により日をまたぎ、当該施設の一日の所定労働時間を超える場合は2日として算定して差し支えありません。同一日に複数回シフトに入る場合は、同一日であるため1日とカウントします。
慰労金Q&Aより
日をまたげば2日間の勤務になります。ただし、同一日に複数回シフトに入っても1日とカウントされるようです。
勤務時間が短くても1日とカウントされるの?
勤務時間が短い場合、例えば訪問介護で1件しか訪問していない日はどうなる?ということですが、これもQ&Aで示されています。
A90
1日当たりの勤務時間の長短は問いません。
慰労金Q&Aより
時間数は問わないので、あくまで何日勤務したかという日数のみを計算するようです。
退職者は申請できないの?
退職者も申請できます。
A131
実施要綱に定める支援対象者に該当する者であって、既に介護サービス事業所・施設等を退職した者については、以下のいずれかの方法により給付申請を行います。
ア 対象期間(始期より令和2年6月30 日まで)における勤務先による申請
イ 対象期間における勤務先が所在する都道府県への直接申請※退職者からの給付申請にあたっては、いずれの場合においても、原則として、当該退職者が勤務していた介護サービス事業所・施設等から勤務期間の証明を取得する必要があります。
慰労金Q&Aより
対象者はもともと働いていた勤務先から申請する以外にも、直接都道府県に申請する方法もあるようです。
20万円の対象になるのは?
新型コロナウイルスの感染者・濃厚接触者に対応した職員は慰労金の支給額が20万円になります。
濃厚接触者の定義は?
濃厚接触者は誰を指すのかについてはこのように記載しています。
A80
濃厚接触者は保健所が判断しますが、保健所等から濃厚接触者の情報が得られない場合について、以下に該当した場合は、対象として差し支えありません。
①濃厚接触者である利用者に保健所から連絡が入る
②濃厚接触者である利用者が、保健所から自身が濃厚接触者であることの連絡があったことについて、事業所に報告
③事業所がそれを認識した上でサービスを提供
※上記について職員の装備や勤務記録、サービス提供記録、その他の書類を踏まえて確からしいと判断がつけば可
慰労金Q&Aより
濃厚接触者には保健所から連絡が来ます。
濃厚接触者に対応する場合、在宅の場合ではケアマネも保健所と連携しますので、それで判断がつくのではないでしょうか。
感染の疑いがある人がいても、PCR検査を受けて陰性だった、という場合は対象に含みません。
感染者が居住する同一敷地内に複数事業所があるとき
例えば特別養護老人ホームの入居者が感染。その敷地内でショートステイ・デイサービス・訪問介護を行っているときにはどうかという質問です。
A82
同一空間を共有している併設事業所は、全てに感染者が発生した事業所と取り扱って差し支えありません。
慰労金Q&Aより
同一空間で感染者に対応しているとみなされます。
申請を事業所が行うことについて
申請は事業所が取りまとめて行います。
そこで心配なのが、事業所がお金を渡してくれない、というケースです。
慰労金を事業所が従業員に支払わないことを防ぐシステムはありますか。
A112
システム上の仕組みは無いので、事前の周知徹底をお願いいたいします。※慰労金支給に係る政府広報等もご活用願います。
慰労金Q&Aより
ばっさりと切り捨てていますが、これは職員間でもしっかり周知し、該当するのにもらえない職員が出ないようにしなければいけないですね。
この慰労金支給については非常に対象範囲を幅広く設定しています。
もらえるはずの人がもらえない、ということがないよう、事業所内で周知していくことが望ましいですね。
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