新型コロナウイルスの感染拡大にともない、東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫・福岡の7都府県に緊急事態宣言が発令されました。
まだ休業要請については自治体と国との間に考え方の隔たりがあるようで、実効的な対応とは言いかねますが、経済界へ与えるインパクトは少なからずあります。
政府は補償の問題には言及せず、あくまで自粛の範囲でやり過ごそうという魂胆が見え見えですが、まあ控えめに言ってドケチというか、国家としての対応としてはあまりにも無責任ですね。
財政的に潤っている東京都などは独自に対応できるのかもしれないですが、地方で感染爆発が起きた時にはもうどうにもならないでしょうね。
この記事の目次
介護施設のクラスター事例。
新型コロナウイルスの感染に関しては、介護関連の事業が集団感染を引き起こすクラスターとして指摘されています。
横浜市でも18人のクラスターがグループホームで発生しました。
横浜市は、不特定多数への感染拡大がないことを理由に、事業所名や発生地域なども公表しませんでしたが、不安はますます広がっています。
これまでも福祉施設等で集団感染が発生しており、地域住民からも不安の声が上がっています。
この中で、もっとも難しい判断を迫られているのがデイサービスです。
決断を迫られるデイサービス
無限に広がるデイサービスの感染拡大リスク
通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・通所リハビリテーションといったいわゆる通所系サービスに関してはさらに難しい対応を迫られています。
住宅型・入所型施設であれば、新規入所や短期入所のストップであったり、面会の禁止、外出行事・地域交流イベント等の中止など、外との関係を断つことについては比較的対策しやすい部分があります。
もちろん、職員がウイルスを持ち込まないことが大前提になりますが、すでにほとんどの施設が何らかの対応をとっていると思われます。
ただし、デイサービスはそうはいきません。
デイサービスの利用者には多くの人が関わっています。
ひとりの利用者には、家族がいて、ヘルパーや訪問看護師など訪問系のサービスが関わっていて、ケアマネジャーがいて、主治医がいて、通院先の医療機関の待合室などで出会う人や道中に出会う人など、様々な方がかかわっているのです。
そんな利用者を受け入れることによって、当然感染のリスクは高まります。
さらに、デイサービス内で集団感染が起これば、それぞれの利用者が家族やサービス事業所などに感染を広げ、さらに感染した医療や介護サービス従事者が職場や次の訪問先に感染を広げ、指数倍数的に感染が広がっていきます。
つまり、デイサービスの集団感染は無限に広がるリスクがあるということを自覚しなければいけないということです。
名古屋市での休業要請では
名古屋市では集団感染が判明した二つの区に対して、デイサービスの休業要請を行い、更なる感染拡大を食い止めるという結果を残しています。
その際の休業補償として、本来得られるはずだった介護報酬を補償し、総額一億円の休業補償を行うことを発表しました。
様々な影響は出ているかと思いますが、非常にスピーディな対応だったと思います。
これを機に、デイサービスでの集団感染のリスクもさらに認識されるようになりました。
専門家会議でも警鐘
専門家会議でもこのような意見が出ています。
新型コロナウイルスへの対策を協議している国の専門家会議は1日にまとめた提言で、介護・福祉の現場に対し、感染リスクを減らす努力の徹底を改めて呼びかけた。
介護のニュースサイトJOINT
サービスの制限にも言及。「感染が流行している地域においては、福祉施設での通所サービスなどの一時利用を制限(中止)する、利用者の外出、外泊を制限(中止)するなどの対応を検討すべき」と要請した。
当初、このように通所利用の自粛や休業を求める声も強くありました。
そのため、通所サービスを提供せず、訪問対応や電話対応などでも通所介護の費用を請求できるよう特例も示されました。
感染を防ぐ観点から利用者に通ってもらうことが難しい場合、電話で安否確認を行えば介護報酬を得られるようにする。行政から休業の要請を受けていれば1日2回まで、受けていなければ1日1回まで。利用者の意向を確認することを前提として、あらかじめケアプランに位置付けた利用日に算定できるとした。施行は4月7日から。
厚労省は既に、通所介護の事業所が必要に応じて訪問サービスを提供することも容認している。
この訪問サービスの介護報酬は、実際に提供した時間に見合った通所介護の報酬区分で算定する決まり。提供したのが短時間であれば、最短の「2時間以上3時間未満」の報酬区分が適用される。
厚労省は今回の通知で、電話による安否確認もこれと同じルールにすると説明。電話が3時間以上に及ぶことはないとして、基本的に全て「2時間以上3時間未満」の報酬区分で算定してもらう意向を示している。
介護のニュースサイトJOINT
訪問・電話対応に切り替えるデイサービス
クラスターが発生してしまっては事業継続の危機に立たされることを考えれば、決してサービス提供内容を変更することは悪い手ではありません。
特に、短時間のリハビリをメインにした機能訓練型デイサービスには大きな意味を持つでしょう。
つまり、もともとサービス提供時間数は3時間~4時間程度で午前と午後で分かれ、入浴や食事などのサービスを提供しない形態です。マシントレーニングや運動指導などを提供する短時間デイですね。
電話や訪問対応で報酬算定できるのであれば、電話や訪問で十分対応できるでしょう。すでに通所をストップし、訪問対応に切り替えている事業所もあります。
デイサービス職員が訪問でできることなど限られていますが、それでも2~3時間の通所介護の報酬が得られるのに、訪問介護の報酬はどう考えても安すぎると思うのですが、この不公平感は是正するか、リスクを負っている訪問介護や訪問看護にはなんらかの給付や助成をしてほしいなと思います。
休業要請の範囲が迷走。判断を
しかし、東京都でもいまだに休業要請の範囲について限定することができず、デイサービスも判断に迷う部分です。
現時点での方向性としては、緊急事態宣言の7都府県でも休業要請は行わず、感染対策を行った上で事業を継続するよう求めています。
新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が出された7つの都府県では、介護施設のうちデイサービスなどの通所施設とショートステイなどの短期間のみ入所する施設については、知事が必要だと判断した場合、使用の制限や休業の要請ができるとされていますが、現時点ではいずれも休業などの要請は行わない方針です。
緊急事態宣言が出された東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7つの都府県にNHKが取材したところ、いずれもサービスを利用している高齢者の生活を守るために運営の継続が必要だとして、現時点では使用制限や休業要請を行わない方針だとしています。
NHK NEWS WEB
継続しろ、でも感染を出すな。
かなりな無理ゲーですね。
デイサービスや通所系介護サービス事業者にはスピーディで適切な判断が求められます。
他の事業所の出方を伺ったり、家族やケアマネの意見に動かされるのではなく、その地域の状況に応じて、なにが最善かを判断していかなければいけません。
そして、その決断に至る経緯を根拠や法人の目指すべき理念とあわせて利用者や家族、ケアマネ等に示していくことも重要です。文書やホームページ上でのアナウンスなどもしていくことが求められます。
集団感染がこれ以上増えないように願い、一日でも早い収束を期待しています。そして、介護従事者・医療従事者が安心して働ける環境ができるよう願っています。
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