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社会福祉協議会の居宅ケアマネが訪問モニタリングせずに不正受給
名寄介護報酬不正は1億2千万円
名寄市の介護支援事業所が介護報酬を不正に受け取っていた問題で、市は監査の結果、不正額は1億2000万円余りに上ると発表しました。
名寄市にある「名寄社協居宅介護支援事業所」は、ケアマネージャーが高齢者の自宅に訪問したと偽るなどして介護報酬を不正に受け取っていたことが去年10月明らかになりました。
そして12日、名寄市の加藤剛士市長が会見を開き、市の監査の結果、不正額は去年9月までのおよそ5年間で1億2000万円余りに上ると発表しました。
そのうえで、来月から6か月間、この事業所の新規利用者の受け入れを停止するなどとする行政処分を行う方針を明らかにしました。
加藤市長は「市民の皆さんにおわび申し上げます。今後、2度と起こらないよう介護サービスを提供する事業者に対し適切な指導を行っていきます」と話していました。
NHK NEWS WEB
介護報酬の不正受給のニュースはこのサイトでも何度も取り上げてきましたが、今回の不正請求についてはちょっと異質なので紹介したいと思います。
不正請求を行ったのは北海道の名寄市にある名寄社協指定居宅介護支援事業所。
名寄と書いて、「なよろ」と読むんだそうです。
社会福祉協議会の不正請求。ケアマネはモニタリングをせず。
概要としては、ケアマネが本来行うべき業務である月に一回以上の居宅訪問によるモニタリングを実施していなかったというものです。
当初、不正額は2600万円とされていた金額は、過去5年にわたることが判明し、監査結果で判明した不正請求額は1億2000万円となりました。
居宅介護支援事業所で5年間としても1億2000万円ってなかなか見ない不正請求額です。
居宅介護支援事業所のケアマネ6人体制だったようですが、ひと月あたりの不正請求額200万円。ケアマネ一人あたり月33万円。まぁ。ほぼ請求額全部不正だったということでしょう。
となると、まったくモニタリングしていなかったんでしょうね。唖然とします。
社会福祉協議会の看板があるからと言って、そこに利用者を紹介していただろう地域包括は何も思わなかったのでしょうか。
さらに衝撃的な事実が報道されます。
名寄市に改善勧告。市は問題を把握していたが改善に努めなかった。
名寄市に“極めて異例”改善勧告
名寄市の介護支援事業所が介護報酬を不正に受け取っていた問題で道は、名寄市が問題を把握していたにも関わらず長期にわたって適切な指導を怠っていたとして、「改善勧告」を行ったことが分かりました。
道が市町村に対して勧告を行うのは、極めて異例だということです。
この問題は名寄市の「名寄社協居宅介護支援事業所」でケアマネージャーが高齢者の自宅に訪問したと偽るなどして去年9月までの約5年間に1億2000万円余りの介護報酬を不正に受け取っていたものです。
名寄市は12日、この事業者に対して来月から半年間、新規利用者の受け入れを停止するなどの行政処分を行う方針を明らかにしました。
しかし道は事業所を監督する立場にある名寄市が問題を把握していたにも関わらず1年以上にわたって必要な行政指導や監査など適切な指導を怠っていたことを重く見て12日付けで介護保険法に基づく「改善勧告」を行いました。
道によりますと勧告は事業所が対象となるのが一般的で、市町村に対して勧告を行うのは「極めて異例だ」ということです。
道は勧告に沿って市に対して▼今後2か月以内に改善策をまとめるよう求めたうえで▼その後、改善策を十分に実行しているかについても確認することにしています
NHK NEWS WEB
名寄市はこの問題を知っていて、1年以上放置していたというのです。
市と社会福祉協議会という関係が、このような不正を助長し続けたという可能性は間違いなくあるでしょう。
これに対して、北海道は居宅介護支援事業所の指導監督を行わなかったとして名寄市に勧告を行ったと報道されています。
名寄市に対して勧告を行った北海道。でも、北海道にも責任が。
っていうか、正義の御旗を振りかざしているように見える北海道の対応もおかしい。
居宅介護支援事業所の指定権限や指導監督権限が市町村に移譲されたのは平成30年度の制度改正から。
それ以前の指導権限は北海道にあったはず。
不正請求は5年間続いていたとしたら、気が付かなかったとしても指導権限があった北海道にも責任がある。
北海道はそれまでこれだけの不正を本当に知らなかったのか?通報や苦情はまったくなかったのか?
ケアマネが6人いても不正はする。大規模事業所の意義とは?
国は居宅介護支援事業所の大規模化を推奨しています。
特定事業所加算取得によるスケールメリットは非常に大きく、介護報酬は一人の利用者あたり最大500点加算。
通常の基本単価では要介護1~3であれば1,057単位。これが1,557単位に。およそ1.5倍。
ペイペイのキャッシュバックポイントなんて目じゃないですね。
大規模化することで、サービスの質も向上するということですが、本当にそうでしょうか。
腐ったミカンと同じ、みんなでやれば怖くない。
事業所がそうしろと言えば6人いてもみな同じ不正をするのです。
不正を行ったケアマネ6人はすでに退職しているということですが、この6人以外のケアマネが入ってきても同じ不正をする人はいたでしょう。不正を許せず、すぐに退職するというケアマネはいるかもしれませんが、組織を変えることはできなかったでしょう。
本当に必要なのは管理者としてのモラルと知識。
本当に大切なのは、事業所の管理者としてのモラルと知識です。
絶対にバレるであろう不正を続けているのに、居宅の管理者もこんな大ごとになると思ってもいなかったのでしょう。
居宅介護支援事業所だけではありませんが、管理者が集まるべき集団指導講習の出席者数は毎年非常に少なくなっています。
法令順守が求められ、さらに制度がコロコロ変わる介護保険制度、聞きかじりの知識で事業運営を行う事業所が多すぎる。
居宅介護支援事業所の管理者要件を主任ケアマネに限定したりしてましたが、事業所の管理者に求められるのは事例検討会の進行するスキルじゃないでしょ。
管理者要件を求めるなら、集団指導講習の出席を必須にするべきです(受講できない場合も考え、複数開催日の設定や代替手段なども含め)。
新型コロナウイルス騒ぎで風化されないよう、名寄市や北海道の対応にも注目していきたいと思います。
でも、正直思う。モニタリングの意味って
でも、今回の新型コロナウイルスの問題で、モニタリングを事業所の判断で、当面の間は感染予防のために行わないという方法もとれることになりました。
モニタリングを行わないことで、現場に深刻な影響が出たかというと、おそらくそういった事例は少ないように思いますが、いかがでしょうか。
じゃあ、そもそも月に一回自宅を訪問しなきゃいけない、ってルールは一体何なんでしょう。
面会しなければ話しにくいこともあると思いますし、ケアプランの確認のためには訪問も必要だとは思いますが、でも、毎月である意義ってそもそも何なんでしょう、と思うのは自分だけではないかと・・・
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