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介護分野における文書にかかる負担軽減へ
第4回社会保障審議会介護保険部会介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会
介護分野の文書の負担軽減策を議論(10月16日)
Web医療と介護より
社会保障審議会・介護保険部会の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」は10月16日、介護の指定申請・報酬請求・指導監査の各分野における簡素化・標準化・ICT等の活用による負担軽減策について議論した。
専門員会は11月27日の会合で中間取りまとめを行い、12月にも介護保険部会に報告する予定だ。それを受け、厚労省は今年度中にも通知等を発出し、一部の取り組みは進めていく。
たとえば指定申請及び報酬請求に関する文書の押印について、①指定(更新)申請書②誓約書③介護給付費算定に係る体制等に関する届出書については、それぞれ原則、正本1部に限る。また付表や添付書類への押印は原則不要とする。押印した文書をPDF化し、メール等により送付することも可能とする予定だ。
先日、介護分野の事務負担の軽減を目指した専門委員会が行われました。介護保険部会の介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会はこれで第四回目になります。
脱・書類で介護事務の負担軽減、を目指しているはずなのに・・・
このペーパーレス化に関しては、小泉進次郎(現環境大臣)が陣頭に立って推進していましたので、メディアに取り上げられることもあり、記憶されている方も多いかと思います。
10月の介護報酬改定に関しても、重要事項説明書の記載の料金表が変更になるから署名を取り直すべきかどうかで、結局、「署名捺印などは必要ない」という通知が厚生労働省から発表されたのも9月19日。10月1日の改正の前にみんな利用者さんへの説明と署名捺印の書類作成し終わってますよ。
国のペーパーレス化への意識なんて残念ながらそんなものです。介護現場の負担軽減なんて考えているわけがない。
事務負担軽減・ペーパーレス化の焦点は
負担軽減しなければいけないのは「現場」のはずでは?
しかし、こうして委員会を立ち上げてペーパーレス化による事務負担軽減を目指しているので期待できるのでは・・・なんて考えている人もいるかもしれません。
ただ、今回焦点に上がっているメインは、指定申請の書類の負担軽減です。
押印の必要な書類を減らすこと、書類は持参による対面ではなく郵送でいいのではないか、勤務表などを全国共通の書式にすべきではないか、など。。。
え?これ、誰の負担軽減のためのものですか?
大規模法人のための負担軽減
事業所を運営する法人側も負担軽減になります。特に、新規事業所指定申請などが多い大規模法人の負担軽減には大いに役立つでしょう。
同一地域内の新規指定などであれば書式も同じなので、比較的簡単なのでしょうが、保険者が変わると書式も変わるので、書類の作成の手間はかかります。
自分も新規事業所指定の書類作成の経験ありますが、似たような書類をいくつも作るのはなかなかに気が滅入ります。行政書士やコンサルタントなどの専門家に依頼する法人も多いと思います。
ただ、現在介護サービスを提供している中小規模の法人にとっては意味のない改正ですね。
指導監査の書類の負担軽減や、更新申請のときに書類を持参しなくてよくなるということはあるかもしれませんが、直接的な負担軽減になるとは考えにくいですね。
自治体側の負担軽減
ぶっちゃけ、一番はここなんでしょう。
事業所数も増え、指定申請・更新申請さらに指導監査の数も増えると、事務負担が多くなります。どう考えても書類が多すぎる。似たような書類ばかりで、それを並べて間違い探しをするような仕事です。新規指定申請だけでなく、更新のたびに対面して確認しなければいけないとか、江戸時代か。
書面はオンラインでもいいでしょうし、どうしても対面したければビデオチャットでもしてください。
指導監査もいちいち法的な根拠のない余計なつっこみを入れて、マーキングしたがるいい年こいた大人たち。非常に無駄というかもうすでに害悪でしかない。
介護サービス情報公表の調査もそうですけどね。 やりたいなら第三者評価でもやってろと言いたくなります。
で、今回の事務負担軽減。結局は誰のためのものかっていうと、自治体の事務負担軽減のためのものなんですよね。
現場の介護職員の事務負担軽減をするはずだったのが、いつの間にか自治体の事務負担軽減をするための委員会になっている。
自民党は先の参議院議員選挙での公約にも掲げていたのに、得意の論点のすり替えです。
現場の事務負担軽減についての議題が上がるまでにはどのくらい時間がかかるのでしょうか。
現場の事務負担軽減までの遠い道程
まだまだ現場の事務負担軽減までの道のりはまだまだ遠そうです。
もちろん、書類は大事です。記録は大事です。仕事として介護を行っていくのであれば、書類に残すことは自分たちの身を守ることにもなりますし、これまでの過程を可視化することにもつながります。計画があることで、チームとして支援内容を統一することができますし、目指すべきゴールを共有することもできます。
ただ、本当に今書いている書類に意味があるのかを問いたくなる場面、ありますよね?
同じ記録を別の書式に書いているだけなんじゃないか、この書類が後に意味を持つことはないんじゃないか、そんな疑問を持つことも多いと思います。
ケアマネも課題分析票をつくれだの評価表を作れだの、いまだに書類を増やそうとしている。アセスメントの一環なのであればアセスメントの在り方を改めて統合するようにするとか、もうちょっと考えるべきでしょう。
利用者ごとに作成する通所介護計画書、各加算を算定するためにある毎回コピペ丸写しの計画や評価。こんなのももう少しブラッシュアップするべきなんじゃないでしょうか。
きっと書類作成にかかる事務負担軽減は、現場発信で声を挙げればいくらでも実現できるはずです。
ICT化・ペーパーレス化の目指すゴールは介護職員の事務負担を軽減して、介護職員が介護業務に専念できる環境を作ることのはずです。
これまで記録や書類作成に奪われていた時間を介護業務に充てることができれば、サービスの質を落とすことなく、介護人材の不足をカバーすることも可能になります。
介護人材は34万人不足するという見通しですが、もちろん確保する見通しも立たず、むしろ介護をする人の確保はますます遅れをとっている印象すら感じます。
介護人材の確保はもう喫緊の課題であるはずなのに、それを後回しにしていることが理解できません。
新規指定申請に押印が必要な書類を減らすとか、そんな悠長なことを検討している場合じゃないことをもう一度確認すべきなんじゃないでしょうか。
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