この記事の目次
平成30年度ケアマネ試験、合格率は衝撃の10.1%!
これはひょっとしたら介護保険制度の仕組み自体変わっていってしまうのかもしれない、と危機感を感じさせる結果でした。
今回の介護支援専門員実務者研修受講試験(いわゆるケアマネ試験)ですが、合格者数と合格率が発表されました。
全国での合格者数は4,990人、合格率は10.1%。
10.1%です。10.1%。
行政書士や公認会計士レベルです。
実務経験が必要な資格試験としては異常な合格率の低さです。
ケアマネ試験、受験者数・合格者数の推移
厚生労働省発表のこれまでのケアマネ試験の受験者数・合格者数・合格率の推移をご覧ください。
※厚生労働省ホームページより
ケアマネ試験 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
第1回(平成10年度) | 207,080 人 | 91,269 人 | 44.1 % |
第2回(平成11年度) | 165,117 人 | 68,090 人 | 41.2 % |
第3回(平成12年度) | 128,153 人 | 43,854 人 | 34.2 % |
第4回(平成13年度) | 92,735 人 | 32,560 人 | 35.1 % |
第5回(平成14年度) | 96,207 人 | 29,508 人 | 30.7 % |
第6回(平成15年度) | 112,961 人 | 34,634 人 | 30.7 % |
第7回(平成16年度) | 124,791 人 | 37,781 人 | 30.3 % |
第8回(平成17年度) | 136,030 人 | 34,813 人 | 25.6 % |
第9回(平成18年度) | 138,262 人 | 28,391 人 | 20.5 % |
第10回(平成19年度) | 139,006 人 | 31,758 人 | 22.8 % |
第11回(平成20年度) | 133,072 人 | 28,992 人 | 21.8 % |
第12回(平成21年度) | 140,277 人 | 33,119 人 | 23.6 % |
第13回(平成22年度) | 139,959 人 | 28,703 人 | 20.5 % |
第14回(平成23年度) | 145,529 人 | 22,332 人 | 15.3 % |
第15回(平成24年度) | 146,586 人 | 27,905 人 | 19.0 % |
第16回(平成25年度) | 144,397 人 | 22,331 人 | 15.5 % |
第17回(平成26年度) | 174,974 人 | 33,539 人 | 19.2 % |
第18回(平成27年度) | 134,539 人 | 20,924 人 | 15.6 % |
第19回(平成28年度) | 124,585 人 | 16,281 人 | 13.1 % |
第20回(平成29年度) | 131,560 人 | 28,233 人 | 21.5 % |
第21回(平成30年度) | 49,333人 | 4,990人 | 10.1 % |
第1回~第21回合計 | 2,805,153 人 | 700,007 人 | — |
10.1%という合格率はもちろん過去最低の数字でした。
第一回ケアマネ試験が44%でしたから、ケアマネの質の問題なんて言われて当たり前ですよね。
これまでの受験者数と合格者数の推移をグラフにしてみました。
合格率の減少よりも深刻な問題
もちろん、合格者数の減少は深刻な問題です。
でも、それ以上にどうしようもない問題として、受験者数も激減しています。
受験者数は49,333人とこちらも過去最低で、前回の40%程度の人数しか受験をしていません。
今年度のケアマネ試験、合格者は4,990人。
地域によって合格率も差がありますが、29人しか合格しなかった県もあります。29人をケアマネにするために県がどれだけの予算を使っているのかを考えたら恐ろしくなります。
介護職員の処遇改善への期待もあり、ケアマネになりたいという人は少なくなっているのでしょう。いや、それどころか、介護の仕事をしたいという人自体が少なくなっているのでしょう。
これに危機感を感じていなかったらおかしいですよね。
合格率は多少目をつぶっても上げるべきでしたが、それを10.1%まで下げたというのは、もう制度の維持ができるかどうかという深刻な問題です。
意図的なケアマネ減らし。介護保険制度からケアマネジャーはいなくなる?
ここまで大幅に合格率を下げたということに、何らかの意図が働いていたことは明白です。
高齢化するケアマネ。いま、ケアマネの平均年齢は48歳。
このままケアマネ試験合格者が減少していけば、現役世代のケアマネ人口はあっという間に少なくなっていくでしょう。
ケアマネは介護保険制度の絶滅危惧種になるかもしれません。
もしくは、専門職としてではなく、定年退職後のボランティアのような形で相談を行う役割になっていくのかもしれません。シルバーカーを押しながら、利用者のもとに向かう高齢ケアマネ。同世代で昔はどうだったと話し合うような時代が来てもおかしくありません。
ケアマネの質の低下、ケアマネなんて介護を多少かじっていたら誰でもできるんじゃない?なんて方向に誘導していく可能性もあります。
もしくは重度の方だけが介護保険制度の対象となりケアマネが担当し、要支援や軽度(要支援・要介護1・2)は総合事業の対象となり、ボランティアケアマネ・なんちゃってケアマネが担当します、なんてこと。
以前だったら「ないない(笑)」と笑い飛ばせましたが、ありえなくもない未来ですね。
未経験のケアマネは増えている?
もうひとつ、未経験のケアマネは増えているような気がします。
これは正確なデータや根拠があるわけではないのですが、ケアマネの事業所管理者を主任ケアマネに限定したことで、小規模の事業所は未経験のケアマネを採用しにくくなりました。だって、ケアマネ実務経験5年ないと主任ケアマネの研修は受けられないし、主任ケアマネが一人はいないと事業所は閉鎖せざるを得なくなります。
求人情報も、ケアマネの募集はありますが、経験者に限定した求人情報が圧倒的に多くなっているように思います。
この管理者資格に主任ケアマネの資格を求めたのは誰あろう、ケアマネの職能団体である日本ケアマネ協会です。
ここにいる人たちは小規模のケアマネ事業所のことなんてまったく考えていないんだろう。未来あるケアマネを育成していこうという気持ちもないのだろう。それとも誰かに誘導されているのか?
試験問題の在り方にも疑問
合格基準点を厳しくしたわけではないという言い分はあるのかもしれません。確かに今回の介護支援分野の合格基準点は13点。
ただ、試験問題は重箱の隅をつつくような出題ばかりで、ケアマネという職業の資質や必要な能力とは全く関係の内容な問題が目立ちました。合格基準点が下がっているからといっても、試験問題を見たら、ケアマネ受験者の質が低下しているという根拠にはならないことは一目瞭然でしょう。
こんな試験問題を作っておいて、公益財団法人社会福祉振興・試験センターの方々は、このくらいできなきゃね~、とふんぞり返ってニヤニヤとご満悦になっているんでしょうか。
ケアマネは介護保険制度の要
そう、ケアマネジャーは介護保険制度の要です。介護保険制度制定前からずっとそういわれてきました。要を失ったら制度は成り立ちません。
ケアマネが魅力ある仕事であることを主張していくことも必要ですし、もちろんケアプランの自己負担についても自分たちの仕事に誇りをもってきっちり反対を主張していくべきです。職能団体が機能していないのであれば、個人ででも、法人ででも、できることはきっとある。
ケアマネを介護保険制度の絶滅危惧種にしてはいけません。
追記:その翌年。受験者数は回復せず
その翌年もケアマネ試験の受験者数は回復しませんでした。
ますますケアマネを目指す人は少なくなっています。
危機的な状況であることを認識すべきですね。
最近のコメント