平成30年度からの介護報酬改定について、Q&Aも第一弾が発表されています。
今回の介護報酬改定については、厚生労働省の
平成30年度介護報酬改定についてというページにまとめられていますので、ご参照ください。
Q&Aで明らかになったこともあり、今回は訪問看護の改定内容についてまとめてみます。
訪問看護については介護保険だけでなく、医療保険対応になる場合もあり、
今回は介護報酬と診療報酬のダブル改定でしたので、医療保険訪問看護の内容についても一部取り上げていきます。
この記事の目次
1.中重度・ターミナルへの対応
看護体制強化加算の見直し
○看護体制強化加算について、月の変動による影響を抑える観点から、現行3か月である緊急時訪問看護加算等の算定者割合の算出期間を見直すとともに、ターミナル体制の充実を図る観点から、ターミナルケア加算の算定者数が多い場合について新たな区分を設ける等の見直しを行う。
○ その際、地域における訪問看護体制整備の取組の推進を図るために、医療機関と訪問看護ステーションが相互に連携することを明示することとする。<現行>
看護体制強化加算 300単位/月
↓
<改定後>
看護体制強化加算(I) 600単位/月(新設)
看護体制強化加算(II) 300単位/月
これまであった看護体制強化加算に、ターミナルケア加算を算定した件数による評価を加えた
看護体制強化加算(Ⅰ)を追加することになりました。
看護体制強化加算(I)を算定するにはターミナルケア加算の算定者が12か月で5名以上という要件をクリアすることが必要です。
つまり、現在の体制強化加算を算定している事業所のうち、
二か月に一人程度、在宅での看取り対応(入院後すぐにお亡くなりになる場合も算定に含まれますが)をしている事業所は
新しい体制強化加算(Ⅰ)が算定できるということです。
+300単位は結構でかいですね。
当然、この加算は看取り対応でない利用者からも算定できるので、
算定していない事業所と比較して毎月600単位分高いとなれば割高感を感じてしまうデメリットはありますよね。
緊急時訪問看護加算の見直し
○ 中重度の要介護者の在宅生活を支える体制をさらに整備するため、24時間体制のある訪問看護事業所の体制について評価を行うこととする。
○ また、24時間対応体制のある訪問看護事業所からの緊急時訪問を評価することとする。具体的には、現行、早朝・夜間、深夜の訪問看護に係る加算については、2回目以降の緊急時訪問において、一部の対象者(特別管理加算算定者)に限り算定できることとなっているが、この対象者について拡大を図ることとする。訪問看護ステーション 緊急時訪問看護加算
<現行>
540単位/月
↓
<改定後>
574単位/月
また、このように緊急時訪問看護加算も34単位増えています。
訪問看護サービス利用そのものの部分以外で毎月かかる加算部分が増えているということで、
当然利用者の負担も増えていますが、
それだけ中重度の利用者への対応を行う訪問看護事業所を評価しているということでしょう。
介護報酬だけでなく、訪問看護の場合は医療保険で訪問するケースも多いのですが、
医療保険の緊急時訪問看護加算の点数も増えています。
【医療保険】24時間対応体制加算
<現行>
5,400円
↓
<改定後>
6,400円
ターミナルケアの充実
○ 看取り期における本人・家族との十分な話し合いや訪問看護と他の介護関係者との連携を更に充実させる観点から、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うことを明示することとする。
居宅介護支援でもターミナルケア加算が追加されましたが、訪問看護のターミナルケア加算は+2000単位で変わらず。
「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿うという文言が追加されたのですが、
すごい平たく言えば本人の意思を尊重することをベースに、家族から本人の意向を推定したり、
それが確認できない場合は医療・ケアチームの中で慎重に判断するというものですね。
介護報酬ではターミナルケア加算の単位数は変更ありませんでしたが、
医療保険でのターミナルケア療養費は大きく増えています。
末期がんなど、在宅看取りの場合は医療保険で入っている場合が多いです。
また特養などでの末期がんの看取りの場合のターミナルケア療養費が新設されています。
【医療保険】訪問看護ターミナルケア療養費
<現行>
訪問看護ターミナルケア療養費
20,000円
↓
<改定後>
訪問看護ターミナルケア療養費1
25,000円
訪問看護ターミナルケア療養費2(新設)
10,000円
※特養等で死亡した利用者の場合
複数名による訪問看護
○ 訪問看護における複数名訪問加算について、医療保険での取扱いを踏まえ、同時に訪問する者として、現行の看護師等とは別に看護補助者が同行し、役割分担をした場合の評価の区分を新たに創設することとする。
この場合の看護補助者については、医療保険の訪問看護基本療養費の複数名訪問看護加算に係る疑義解釈で示されている者と同様とする。<現行>
2人の看護師等が同時に訪問看護を行う場合
・30分未満の場合:254単位
・30分以上の場合:402単位↓
<改定後>
2人の看護師等が同時に訪問看護を行う場合
複数名訪問加算(I)(変更なし)看護師等と看護補助者が同時に訪問看護を行う場合
複数名訪問加算(II)(新設)
・30分未満の場合:201単位
・30分以上の場合:317単位
複数名で対応する訪問看護についてですが、医療保険の訪問看護では看護補助者が認められていましたが、
今回、介護保険でも看護補助者が同行しての複数名訪問看護が認められるようになりました。
当然単位数は複数名看護師が訪問する場合よりもぐっと下がりますが。
2.セラピストのリハビリテーション訪問の見直し
訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問の見直し
訪問看護ステーションからの理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士(以下、理学療法士等という。)による訪問看護は、その訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に、看護職員の代わりに訪問させるという位置づけのものであるが、看護職員と理学療法士等の連携が十分でない場合があることを踏まえ、評価の見直しを行うこととする。
概要
○理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の場合
<現行>
302単位/回
※1日3回以上の場合は90/100↓
<改定後>
296単位/回
※1日3回以上の場合は90/100(変更なし)※介護予防訪問看護を含む
○以下の内容等を通知に記載する。
ア 理学療法士等が訪問看護を提供している利用者については、利用者の状況や実施した看護(看護業務の一環としてのリハビリテーションを含む)の情報を看護職員と理学療法士等が共有するとともに、訪問看護計画書及び訪問看護報告書について、看護職員と理学療法士等が連携し作成することとする。
イ 訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成にあたり、訪問看護サービスの利用開始時や利用者の状態の変化等に合わせた定期的な看護職員による訪問により、利用者の状態について適切に評価を行うとともに、理学療法士等による訪問看護はその訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に、看護職員の代わりにさせる訪問であること等を利用者等に説明し、同意を得ることとする。
これが訪問看護での報酬改定の本丸のようなものですね。
確かに訪問看護ステーションのリハビリ専門職はものすごい増えました。
さらに、リハビリテーションをメインに看板を掲げた訪問看護ステーションもたくさんできましたね。
ただ、明らかに増えすぎたという印象もあります。
リハビリテーションに質が伴っていないのではないかという意見も聞かれます。
では実際どのようにして看護師と理学療法士等が連携して計画を作っていくのかという点で、Q&Aが掲載されています。
○理学療法士等による訪問看護について
問19
理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士による訪問看護は、訪問看護事業所のうち訪問看護ステーションのみで行われ、訪問看護計画書及び訪問看護報告書は、看護職員(准看護師を除く)と理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士が連携し作成することが示されたが、具体的にはどのように作成すればよいのか。
(答)
・訪問看護ステーションの理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士(以下、理学療法士等という。)が訪問看護を行っている利用者の訪問看護計画書及び訪問看護報告書については、当該訪問看護ステーションの看護職員(准看護師を除く)と理学療法士等が利用者等の情報を共有した上で、「訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて」(平成12年3月30日老企55号)に示す様式に準じて提供したサービス等の内容を含めて作成することとしており、これにより適切な訪問看護サービスが
行われるよう連携を推進する必要がある。ただし、当該様式に準じたうえで、看護職員(准看護師を除く)と理学療法士等で異なる様式により作成することは差し支えないが、この場合であっても他の職種により記載された様式の内容を踏まえ作成する必要がある。
・なお、看護職員と理学療法士等との連携の具体的な方法等については、「訪問看護事業所における看護職員と理学療法士等のより良い連携のための手引き(平成29年度厚生労働省老人保健健康増進等事業訪問看護事業所における看護職員と理学療法士等のより良い連携のあり方に関する調査研究事業(全国訪問看護事業協会))」に
おいても示されており、必要に応じて参考にいただきたい。問20
複数の訪問看護事業所から訪問看護を受けている利用者について、訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成にあたっては当該複数の訪問看護事業所間において十分な連携を図ったうえで作成することとあるが、どのように連携すればよいのか。
(答)
複数の訪問看護事業所により訪問看護が行われている場合については、それぞれの事業所で作成された計画書等の内容を共有するものとし、具体的には計画書等を相互
に送付し共有する若しくはカンファレンス等において情報共有するなどが考えられるが、後者の場合にはその内容について記録に残すことが必要である。問21
留意事項通知において、「計画書及び報告書の作成にあたっては、訪問看護サービスの利用開始時及び利用者の状態の変化等に合わせ、定期的な看護職員による訪問により利用者の状態の適切な評価を行うこと。」とされたが、看護職員による訪問についてどのように考えればよいか。
(答)
訪問看護サービスの「利用開始時」については、利用者の心身の状態等を評価する観点から、初回の訪問は理学療法士等の所属する訪問看護事業所の看護職員が行うこ
とを原則とする。また、「定期的な看護職員による訪問」については、訪問看護指示書の有効期間が6月以内であることを踏まえ、少なくとも概ね3ヶ月に1回程度は当該事業所の看護職員による訪問により、利用者の状態の適切な評価を行うものとする。
なお、当該事業所の看護職員による訪問については、必ずしもケアプランに位置づけ訪問看護費の算定までを求めるものではないが、訪問看護費を算定しない場合は、
訪問日、訪問内容等を記録すること。問22
平成30年4月以前より理学療法士等による訪問看護を利用している者であって、かつ看護職員による訪問が概ね3ヶ月間に一度も訪問していない利用者について、利用者の状態の変化等に合わせ、定期的な看護職員による訪問をする必要があるのか。
(答)
理学療法士等による訪問看護はその訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に、看護職員の代わりに訪問させるものであることから、当該事業所の看護職員による訪問による評価がなされていない利用者については、速やかに当該事業所の看護職員の訪問により利用者の状態の適切な評価を要す
るものとする。問23
理学療法士等による訪問看護はその訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に看護職員の代わりに訪問させる訪問ものであること等を説明した上で利用者の同意を得ることとなったが、同意書の様式はあるのか。また、平成30年4月以前より理学療法士等による訪問看護を利用している者について、同意を得る必要があるのか。
(答)
同意に係る様式等は定めておらず、方法は問わないが、口頭の場合には同意を得た旨を記録等に残す必要がある。また、すでに理学療法士等による訪問看護を利用して
いる者についても、速やかに同意を得る必要がある。
今まで理学療法士等のみで訪問看護事業所からのサービスを提供してきた場合、
看護師による定期的な訪問(最低でも三か月に一回)が必要になります。
ということで、各地の理学療法士等が配置されている訪問看護ステーションでは
三か月に一回看護師が訪問します、とか、一か月に一回看護師が訪問します、とか
そんな方針を急に打ち出しているところがほとんどだと思います。
訪問看護に関してはリハビリテーションを中心に据えた訪問看護事業所を叩くための改定という意味合いが非常に強くなっています。
確かにもともと理学療法士等のセラピストは
「看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に看護職員の代わりに訪問させる」という原則のもとに行われているわけで、そこに立ち返ったという印象が強いですね。
三か月に一回程度という比較的緩い頻度にしたのは、様々な反発があったからだろうとは思うのですが、
一か月に一回で訪問看護を算定する事業所の割合が多くなっているようです。
これじゃ同じく月に一回訪問するケアマネの立場もないでしょうね。
3.予防訪問看護の報酬減額
報酬体系の見直し
○ 要支援者と要介護者に対する訪問看護については、現在、同一の評価となっているが、両者のサービスの提供内容等を踏まえ、基本サービス費に一定の差を設けることとする。
○指定訪問看護ステーションの場合
<現行>
(共通)
20分未満 310単位
30分未満 463単位
30分以上1時間未満 814単位
1時間以上1時間30分未満 1117単位
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の場合(※1日3回以上の場合は90/100) 302単位↓
<改定後>
20分未満 (訪問看護)311単位 (予防訪問看護)300単位
30分未満 (訪問看護)467単位 (予防訪問看護)448単位
30分以上1時間未満 (訪問看護)816単位 (予防訪問看護)787単位
1時間以上1時間30分未満 (訪問看護)1118単位 (予防訪問看護)1080単位
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の場合(※1日3回以上の場合は90/100) (訪問看護)296単位 (予防訪問看護) 286単位
予防の単価を安くするという、これもよくわからない発想ですが、
要介護の場合の方が介助の内容も多いし、予防はそうではないから差をつけようというものですが、
まぁ介護保険のサービスを重度の方に特化していくための布石でもあるかと思います。
一番利用者の多い1時間未満の場合をとってみても814単位が787単位になるので27単位も減額されています。
理学療法士等の訪問の場合も予防はさらに減額されていますので、
要支援の利用者も多いリハ特化型のステーションにとっては追い打ちとなるような報酬改定ですね。
まとめ
ということで、大きなポイントとしては以下のような内容にまとめられます。
・中重度・ターミナルケアを行う事業所を評価していく
・リハビリテーションは看護の一環として行われるサービスであり、三か月に一回は看護師の定期訪問が必要
・理学療法士等によるリハビリテーションの報酬は減らします
・要支援の報酬も減らします
といった内容です。
訪問看護ステーションも事業所数はここ数年で飛躍的に伸びましたが、
その分、今後はそのサービス内容についても厳しく見られるようになっていくでしょう。
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