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千葉 老人ホーム睡眠導入剤事件 飲み物から成分検出
千葉県の老人ホームに勤務していた准看護師が逮捕された事件で、先月中旬、准看護師が白っぽい液体を注いだ同僚の飲み物から睡眠導入剤の成分が検出されていたことが捜査関係者への取材でわかりました。警察では、さらに詳しく動機の解明を進めることにしています。
ことし5月、印西市瀬戸の老人ホームで、当時、勤務していた波田野愛子容疑者(71)が、同僚の女性とその夫に睡眠導入剤を混ぜたお茶を飲ませ、その後、交通事故を起こさせたとして、殺人未遂の疑いで逮捕されました。また、先月中旬には、この老人ホームで波田野容疑者が机の上に置かれていた同僚の飲み物に近づき、小さな別の容器に入った白っぽい液体を注ぎ込む様子が撮影されていました。
施設側がこの映像と、残されていた飲み物を警察に提出し、分析が行われたところ、飲み物から睡眠導入剤の成分が検出されたことが、捜査関係者への取材でわかりました。
捜査関係者によりますと、事件の動機について波田野容疑者は、同僚に対して「いらだちを感じていた」というような内容の供述をする一方で、あいまいな受け答えもあるということです。
警察ではさらに詳しく動機の解明を進めることにしています。
メディアでも取り上げられていますが、非常にショッキングな内容ですね。
睡眠導入剤を飲んだ状態での勤務も行っていた状況ですから利用者への介護でも大きな事故につながる可能性も高かったわけです。
職員13人のうち半数近い職員が症状を訴えていたということは、特定の個人に対する恨みなどではなく、無差別的に行われていたようです。
別の同僚が2月に交通事故で亡くなったのもこれが原因だったとして、
その罪の意識もなく睡眠薬混入を続けていたということは完全に感覚も麻痺していたのでしょう。
気軽に睡眠導入剤を混ぜている様子が動画などでも確認できますが、
普通の感覚であれば人に見えないようにとか、シロップと思えるような容器に入れるとか、隠すようにするものですが、
和やかに会話をしながら堂々と薬を入れている様子が動画にも映っています。
もし錠剤を砕いて説いたものであったとしたら、相当な量を入れているものと思われます。
同僚に対して「いらだちを感じていた」
といった犯行動機を語っていたり、一部の同僚を妬んでいた、という内容の供述をしているとのことです。
ただ、事件は1月ごろから何度も繰り返されているとみられ、
妬みの対象がこれだけ不特定多数であるというのは異常です。
この准看護士の口から、今後どのような真相が語られるのでしょうか。
記事まとめ(千葉日報)
追記
判決が出ました。
(FNNより)
同僚の飲み物に睡眠導入剤を混入し、殺人などの罪に問われてきた、波田野愛子被告(72)。
4日、千葉地裁で言い渡された判決は、懲役24年。
少しやつれた様子で入廷した波田野被告は、判決が言い渡された瞬間、微動だにせず、真っすぐ前を向いて裁判長の言葉を聞いていた。
懲役24年の判決が出たようです。
遺族は無期懲役を望んでいたようですが、現在72歳の被告。
24年後はないのだろうと思います。
殺意があったかどうかが争点になっていましたが、これに関してはこのような判決理由でした。
4日の判決で、千葉地裁は「帰宅を仕向けたということは、物損事故以上の事態を望んでいたと考える」、「死亡事故を起こしてもしょうがないという『未必的な殺意』があったと認められる」などとして、波田野被告に懲役24年を言い渡した。
未必的な殺意という表現をしていますが、
要するに、確実に殺そうという意図はないものの、死ぬ可能性・危険性を十分認識したうえで、死んでしまっても構わない、という心理状態を意味しています。
睡眠薬を飲んで車を運転させ、
死に至る可能性のある事故などを起こさせる、という意図はあったものと認められているということですね。
(追記:平成30年12月5日)
追記
第一審の判決を東京高裁は破棄。
殺人未遂罪を成立するとしたことは事実誤認として、審理の差し戻しを行いました。
千葉県印西市の老人ホームで2017年、睡眠導入剤入りの飲み物を同僚らに飲ませて交通事故を引き起こし、6人を殺傷したとして殺人や殺人未遂などの罪に問われた元職員、波田野愛子被告(73)の控訴審判決で、東京高裁は17日、懲役24年とした一審裁判員裁判判決を破棄し、千葉地裁に審理を差し戻した。
朝山芳史裁判長は「事故に巻き込まれた相手方2人にまで未必の殺意を認め、殺人未遂罪が成立するとしたのは事実誤認だ」と指摘した。
睡眠剤殺傷、審理差し戻し 高裁「一審に事実誤認」 | 日経新聞
ただ、殺意自体は認めているようです。
朝山裁判長は一審に続き、被告が睡眠導入剤を飲ませた山岡さんや同僚夫婦への殺意は認定した。
一方で、山岡さんと同僚夫婦の2件の交通事故の相手方2人については「死亡する危険性まで具体的に思い起こすことは難しく、死亡を期待する理由も全くない」と言及。傷害罪などが成立するかどうか、裁判員による審理を尽くして量刑を判断すべきだと結論付けた。
一審千葉地裁は、殺意を否認した被告の主張を退け、「施設で新たな看護師の採用が検討され、同僚が自分を排除しようとしていると感じ、反感を募らせた」と動機を認定した。弁護側が控訴していた。
睡眠剤殺傷、審理差し戻し 高裁「一審に事実誤認」 | 日経新聞
遺族の感情としては納得いかない部分も多いと思います。
殺意はあったとしても、殺人につながることをどこまで想定できていたかということが今回の焦点になっていますね。
(令和2年1月7日追記)
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