機能訓練をしない通所介護は減算を 軽度者の利用料引き上げも 財務省提言
財務省は4日、国の財政を議論する審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)の会合で、介護保険にかかる費用の抑制に向けた施策を提言した。要介護度に応じて自己負担に差をつける仕組みを導入し、要介護2以下は引き上げるべきと主張。事業所数や給付費が増えているデイサービスにも触れ、機能訓練を行っていないところは報酬を減算するよう促した。政府への意見書に盛り込む方針で、制度の見直しをめぐる今後の議論にも影響を与えそうだ。
財務省はこの日、要介護2以下の高齢者を一律に軽度者と定義づけたうえで、中重度者と比較したデータを紹介。軽度者は相対的に自己負担の月額が少ないことや、給付費の伸びが大きいことなどを指摘した。そのうえで、「中重度者が支払う自己負担額と均衡する程度まで、要介護区分ごとに、軽度者の自己負担を引き上げるべき」と提案。「中重度者への給付を安定的に続けていくため」、「保険料の上昇を可能な限り抑えていく必要がある」、「医療保険の自己負担は一部が3割」などと理解を求めた。
加えて、介護のための出費が家計を圧迫し過ぎないように支援する「高額介護サービス費」にも言及。月々の自己負担の限度額を引き上げるべきとした。
デイサービスについては、現行で要支援1、2とされている市町村の「地域支援事業」で運営する範囲を、要介護2まで拡大すべきと改めて要求している。「多様な主体が利用者のニーズに対応して必要な支援を行っていくことも可能」との認識を示した。さらに、「機能訓練がほとんど行われていないなど、サービスの実態が、重度化の防止や自立支援ではなく、利用者の居場所づくりにとどまっていると認められる場合には、減算措置も含めた報酬の適正化を図るべき」と踏み込んだ。
審議会の資料はホームページにも掲載されているので是非読んでおきましょう。
財務省からの提言を介護分野で抜粋して簡単にまとめると、
・介護保険の高額介護サービス費も医療保険の高額療養費と同水準まで引き上げて自己負担をより多くしましょう。
・軽度者の利用が多いから、利用者負担は要介護度によってその割合を決めて、軽度者の負担割合を大きくしましょう。
・生活援助は民間家事代行との公平性を考えて負担の割合を大きくしましょう。
・福祉用具の貸与価格のばらつきを是正しましょう。軽度者の福祉用具利用は自己負担も大きくしましょう。
・デイサービスは機能訓練をしなければ自立支援にならない時間預かりだけのサービスなので減算しましょう。
・介護報酬の地域格差が大きいので不適正な給付が行われているので、適正化の権限を強くして取り締まるぞ。
という内容です。
財務省の言い分なので仕方ないのかもしれませんが、
「生活援助って家事代行でしょ」
「デイサービスってただの時間預かりでしょ」
っていう、これを審議会でまともに話し合われること自体がそもそもおかしいし、それに異論をだれも挟まないのもおかしな話です。
また、サービスや介護度ごとに自己負担割合を変えるという話ですが、これ、ちょっと想像してください。
軽度者のサービス利用は2割の自己負担ですよ。
あ、生活援助になるので負担割合は倍になって、
それに収入も多いのでこれも負担割合倍になるから、倍率ドン。はい、8割負担ですね。
こんなもん、制度としてやってたらただの詐欺ですね。
となると、どうなるでしょう。
まず、要介護認定の時点で、できるだけ高い要介護度になるように担当のケアマネジャーは調査の不正を行います。
さらに、生活援助は自己負担が大きくなるので、身体介護の内容を無理やりくっつけます。
これ、どうやっても不正だらけになることが目に見えています。
もうひとつ、デイサービスについてですが、資料そのままを転載すると
また、移行の前提として、機能訓練がほとんど行われていないなど、サービスの実態が、重度化の防止や自立支援ではなく、
利用者の居場所づくりにとどまっていると認められる場合には、減算措置も含めた介護報酬の適正化を図るべき。
減算という強い表現を使っています。
デイサービスはそれぞれの特徴でメニューを設定して、そのなかで機能訓練を行っているデイサービスもあったわけですが、
デイサービスは機能訓練を行わなければ減算ですよ、と機能訓練必須になっています。
はたして、いつからそんな制度になったんでしょう。
その機能訓練というものがそもそも何を指しているのか、何を要件にするのか、まったく見えてこない。
形だけの機能訓練をすればいいのか、職員体制さえそろえればいいのか、介護度の改善につながったかを評価するのか。
財務省は「軽度者」を生む要介護認定というシステムが万能に思えているようなのですが、それ自体が不安定で不公平なシステムなのに、
そこに手を付けなければいくら改革するといっても介護保険制度に未来はないでしょうね。
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