要支援者のケアマネジメント、地域包括支援センターの業務から外すべきか―介護保険部会
地域包括支援センターでは、業務量が課題なため、地域住民の健康保持・生活安定のために重要となる「総合相談支援業務」を十分に行えていない。このため、センターが担っている要支援者のケアプラン作成業務(介護予防ケアマネジメント)を、ケアマネジャーに移管するべきではないか―。
25日に開催された社会保障審議会の介護保険部会では、複数の委員からこのような指摘がなされています。
ただし介護予防ケアマネジメントを地域包括支援センターが行っている背景には「自立支援に向けた総合的な視点に立ったケアマネジメント」という側面があり、「多忙ゆえに業務を移管する」という単純な議論は難しいようです。
25日の介護保険部会では、介護保険制度改正に向けて(1)地域支援事業(2)介護予防(3)認知症対策―の3点が議題となりました。今回は(1)の地域支援事業と(2)の介護予防に焦点を合わせます。
(1)の地域支援事業は、被保険者が要介護状態になることを予防するとともに、要介護状態になった場合でも可能な限り地域で自立した日常生活を営めるように、市町村が総合的なサポートを行うことを目的としたもので、「地域包括ケアシステム」の中で極めて重要な役割を果たすことが期待されています。2014年の介護保険法改正によって、次のような枠組みとなっています。
(A)「介護予防・日常生活支援総合事業」:要支援者に対する訪問・通所介護や、一般介護予防事業など
(B)「包括的支援事業」:地域包括支援センターの運営や、在宅医療・介護連携推進事業、認知症総合支援事業、生活支援体制整備事業など
(C)「任意事業」:介護給付費適正化事業や家族介護支援事業など
(B)の包括的支援事業の中に位置付けられている「地域包括支援センター」には、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが配置され、住民の健康保持・生活安定を図るために次の4つの業務を行うことが求められています。
(i)住民の各種相談を幅広く受け付けて、制度横断的な支援を行う「総合相談支援業務」
(ii)判断能力などの衰えた高齢者の権利を守る「権利擁護業務」
(iii)困難事例に直面したケアマネの支援などを行う「包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
(iv)要支援者などのケアプラン作成などを行う「介護予防ケアマネジメント」(第1号介護予防支援事業)
しかし、現状を見ると「地域包括支援センターが、期待されている(i)の総合相談支援業務や(ii)の包括的・継続的マネジメント支援業務を十分に行えていないのではないか」という指摘があります。この点、地域包括支援センターを対象に行った調査からは、▽業務量が課題である(81.6%)▽力量が不足している(53.7%)―といった実情が浮上してきました。前者の業務量については、▽総合相談支援業務の量が課題▽要支援者に対するケアマネジメント業務の量が課題―という声がそれぞれ7割弱に上っています。
こうした状況を踏まえて東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、「要支援者に対するケアマネジメントを地域包括支援センターの業務から除外し、センターは(iii)のケアマネジメント支援や(i)の総合相談支援業務に力を注ぐべきではないか」と指摘。馬袋秀男委員(民間介護事業推進委員会代表委員)や鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)も同旨の見解を述べています。
一方、栃本一三郎委員(上智大学総合人間科学部教授)は「理由は後日述べる」とした上で、「要支援者に対するケアマネジメントを地域包括支援センターの業務から除外する」考えに明確に反対しています。
厚労省老健局振興課の辺見聡課長は、今後の論点の1つとして「要支援者に対するケアマネジメント(介護予防支援と介護予防ケアマネジメント)のあり方」を掲げましたが、「地域包括支援センターは、要支援者への給付を含めて、総合的に『自立支援』を行う観点でケアマネジメント業務を担っている。こうした点を合わせて、要支援者へのケアマネジメント業務を考えていく必要がある」旨を説明。『業務が忙しいから移管する』という単純な議論は難しいことが分かります。
また、「力量不足」という声について鈴木委員は、地域包括支援センターの専門職配置について「保健師や社会福祉士といった資格の保有状況だけではなく、『経験』を考慮すべきではないか」とも提案しています。
そもそも、現在の報酬単価で予防の委託を受けるケアマネがどの程度いるかというところでしょうね。
ただでさえ、介護の利用者の半分以下の報酬単価しか得られない予防のケアマネジメントですが、計画書・評価表の作成や給付管理業務などのペーパーワークも含め、業務負担は要介護の利用者の半分とは思えません。
書類作成などのケアマネの業務負担を減らすべきという議題も上がっていながら、今度は要支援のケアプランはケアマネに移管しようと。
包括の業務が多忙だという単純な理由だけで機能していないのか、
それとも別の原因があるのか、もう少し議論が必要でしょうね。
力量不足というのは、包括職員の離職率も高く、経験のある包括職員が育っていかないという現実もあります。
総合事業に移行しているケースのケアマネジメントはどうするのかなど、これも議論していくことが必要ですね。
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